募集中地域・自治体の補助金

下請代金支払遅延等防止法

実施機関
中小企業基盤整備機構(J-Net21 中小企業支援施策)
募集期間
通年(随時受付)
地域
全国

下請代金支払遅延等防止法(中小企業基盤整備機構(J-Net21 中小企業支援施策))の対象者、金額、対象経費、日程、注意点を、この制度の内容にそって整理しました。

この制度は補助金ではなく、発注者に守らせる「取引のルール」を定めた法律で、2026年1月から「取適法」に変わっている

「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」は、お金をもらう制度ではありません。大きな会社が、立場の弱い会社に仕事を出すときに、代金の払い方や値決めで無理を押しつけないよう、発注する側に義務と禁止事項を課す法律です。補助金・助成金・税制の検索に並んでいるのは、中小機構のJ-Net21が「補助金・助成金だけじゃない!中小企業支援施策」という連載の一項目として取り上げているためです。

最初に押さえておくべき事実が一つあります。J-Net21の該当ページ自体が、冒頭のお知らせで「本記事は2022年1月時点の内容で、下請法は改正され、2026年1月1日から中小受託取引適正化法(取適法)として施行されている」と案内しています。公正取引委員会の資料も、令和7年5月16日に法律が成立し、同月23日に公布され、施行日は令和8年1月1日だと示しています。この記事は、古い下請法の説明にとどまらず、いま発注・受注の現場で守る側にも守られる側にもなる「取適法」を中心に、公正取引委員会と中小企業庁が公表している資料を読んで整理します。

先に、全体像を表にします。

項目内容
制度の種類補助金ではなく、取引の公正化のための法律(規制)
旧名称下請代金支払遅延等防止法(昭和31年制定、通称は下請法)
新名称製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(略称は中小受託取引適正化法、通称は取適法)
成立と公布令和7年5月16日に成立、同月23日に公布
施行日令和8年1月1日(同日以降に発注した取引から新しい禁止行為が適用される)
所管公正取引委員会と中小企業庁が連携して運用。事業所管省庁にも指導・助言の権限が加わった
受けられるもの金銭の給付はなし。発注者の違反に対する是正の勧告・指導、相談、情報提供
費用法律の適用を受けるための申請や手数料はない

この記事の読み手は二通りいます。仕事を受ける側の中小企業は、自社の取引が法律で守られる範囲にあるかを確かめ、代金の払われ方がルールに沿っているかを見る側です。仕事を出す側の会社は、2026年1月の改正で何が変わり、どの取引慣行を直さなければならないかを確かめる側です。同じ条文でも見る角度が違うので、以降は両方の視点を入れて書きます。

なぜ下請法が取適法に変わったのか。改正の背景

改正の背景について、公正取引委員会・中小企業庁の説明資料は次のように述べています。近年の急激な労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇を受け、物価上昇を上回る賃上げを実現するには、事業者が賃上げの原資を確保する必要がある。そのためには、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を定着させる「構造的な価格転嫁」が重要だ、という考え方です。

資料には、協議に応じない一方的な価格決定のような、価格転嫁を阻害して受注者に負担を押しつける商慣習を一掃し、取引を適正化するために改正を検討してきた、とも書かれています。検討の経緯として、令和6年6月の閣議決定、令和6年7月から12月にかけて計6回開かれた有識者の研究会(企業取引研究会)、令和6年12月25日の報告書の取りまとめが並んでいます。

改正の中身は、大きく分けて次の表の六つです。

改正事項何が変わるか狙い
協議を適切に行わない代金決定の禁止価格協議の求めに応じない、必要な説明をしないまま一方的に代金を決めることを禁止コストが上がっても価格を据え置く取引への対応
手形払等の禁止手形払を認めない。電子記録債権やファクタリングも、支払期日までに満額の現金を得にくいものは認めない発注者が受注者に資金繰りの負担を求める慣行をなくす
運送委託の追加発荷主が運送事業者に物品の運送を委託する取引を、新たに対象に加える荷役や荷待ちを無償でさせる問題への対応
従業員基準の追加資本金に加え、従業員300人(役務提供委託等は100人)の基準を新設増資や減資で法の適用を逃れる動きを防ぐ
面的執行の強化事業所管省庁の大臣にも指導・助言の権限。報復措置の禁止の申告先にも追加公取委、中企庁、事業所管省庁が連携して動く
用語の見直し親事業者は委託事業者、下請事業者は中小受託事業者、下請代金は製造委託等代金に「下請」という語感が対等でない関係を連想させるとの指摘への対応

用語の見直しについては、資料に中小企業庁・公正取引委員会のアンケート結果が載っています。回答者数3,583件のうち、外注先を「下請」企業と呼んだことがない発注者が76.8%、今も「下請」企業と呼んでいる発注者が7.5%、以前は呼んでいたが今は呼ばない発注者が5.8%でした。発注者から「下請」企業と呼ばれたことがない受注者は80.1%、今も呼ばれている受注者が11.9%という結果です。

自社の取引は対象になるのか。取引の種類と資本金・従業員の基準

取適法が守る取引かどうかは、二つの条件の組み合わせで決まります。一つ目は取引の内容、二つ目は発注者と受注者の規模です。公正取引委員会のリーフレットの区分を、表にまとめます。

取引の内容委託事業者(発注側)の規模中小受託事業者(受注側)の規模
製造委託、修理委託、特定運送委託。情報成果物作成委託と役務提供委託のうち、プログラム作成、運送、物品の倉庫における保管、情報処理に限るもの資本金3億円超資本金3億円以下
同上資本金1千万円超3億円以下資本金1千万円以下
同上従業員300人超従業員300人以下
情報成果物作成委託と役務提供委託のうち、上記のプログラム作成、運送、倉庫保管、情報処理を除くもの資本金5千万円超資本金5千万円以下
同上資本金1千万円超5千万円以下資本金1千万円以下
同上従業員100人超従業員100人以下

資本金の基準と従業員の基準は、どちらか一方に当てはまれば対象です。旧法では資本金だけで判断していたため、受注者に増資を求めて法の適用を外そうとする発注者がいる、という問題が資料で指摘されています。従業員基準の追加は、この抜け道をふさぐ意味があります。

「常時使用する従業員」の数え方

従業員基準でよく聞かれる点を、公正取引委員会のよくある質問から表にします。

疑問公取委の回答の要点
パートやアルバイトは数えるか数える。正社員、契約社員、パートタイマー、アルバイト、1か月を超えて引き続き使用される日雇い労働者が含まれる。日々雇い入れられる者(1か月を超えて使用される者を除く)は含まない
グループ会社の従業員は含むか含まない。事業者単位で判断する
いつの人数で判断するか製造委託等をした時点の「常時使用する従業員の数」。その後に人数が増減しても、その取引の適用の有無は変わらない
発注者に従業員数を確認する義務はあるか確認の義務はない。ただし、従業員数が基準付近の受注者や変動が大きい受注者には、確認のために積極的に連絡を取ることが望ましいとされている
受注者に従業員数を説明する義務はあるか説明の義務はないが、発注者からの確認に適切に対応することが望まれる
受注者が事実と違う人数を答えて、発注者が適用外と誤認したら違反行為は是正する必要があり、必要に応じて指導・助言を行うことがあるが、直ちに勧告を行うものではない

確認の方法として、公取委は書面や電子メールなど記録に残る方法が望ましいとしています。例として、見積依頼書に「従業員数が300人を超える場合はチェックを入れて返送してほしい」と記載する方法や、見積書の備考欄に「従業員数は300人を超えていない」と書いてもらう方法が挙がっています。

資料に出てくる、対象になるか迷いやすい取引

よくある質問には、取引の具体例ごとの判断も載っています。代表的なものを抜き出します。

取引の例公取委の整理
規格品・標準品を購入する発注者が仕様などを指定していなければ「委託」にならず、製造委託に当たらない。刻印を打つ、ラベルを貼る、自社の仕様に合わせて切断させるなど、仕様を指定して依頼すれば委託に当たる
商品化を前提とした試作品の製造を頼む最終商品と同等のレベルの試作品なら製造委託に当たる
野菜や果物の生産を頼む農耕などの原始的な生産は「製造」にも「加工」にも含まれないため、製造委託に当たらない
カット野菜のセットなど、サイズやパッケージを指定して製造を頼む原材料に工作を加えて価値を付けているため、製造委託に当たる
労働者派遣を受ける自社の指揮命令下で業務を行わせるため、委託取引とならず対象外
建設工事の再委託本法は適用されない。ただし、建設資材の製造委託や設計図の作成委託などは対象になりうる
親会社と、議決権の50%超を持つ子会社との取引実質的に同一会社内の取引とみられる場合は、従前から運用上問題としていない

建設工事の再委託が対象外である点は、建設業の方が誤解しやすいところです。建設業者であっても、建設資材を業として販売していて、その製造や販売先までの運送を他社に頼む場合は、製造委託や特定運送委託に当たると公取委は説明しています。

発注する会社が守る「4つの義務」

取適法は、委託事業者に四つの義務を課します。リーフレットの内容を表にします。

義務具体的な内容実務で気をつけること
発注内容等を明示する給付の内容、代金の額、支払期日、支払方法などを、書面または電子メールなどの電磁的方法で明示する改正で、受注者の承諾の有無にかかわらず電磁的方法でよくなった
書類等を作成・保存する取引が完了した場合に、給付内容や代金の額など取引の記録を作り、2年間保存する発注内容を変更したときの記録も必要
支払期日を定める検査の有無を問わず、物品等を受領した日から起算して60日以内で、できる限り短い期間内に定める「毎月末日納品締切、翌月○日支払」など、日付の決め方が60日に収まるか確認する
遅延利息を支払う支払遅延や減額をした場合、遅延した日数や減じた額に応じて年率14.6%の遅延利息を払う改正で、代金を減額した場合も遅延利息の対象に追加された

遅延利息の計算例

年率14.6%がどの程度の負担になるかを、仮の数字で計算します。代金が100万円で、受領から60日を過ぎてからさらに30日遅れて払った場合を考えます。公取委のよくある質問では、遅延利息は受領後60日を経過した日から支払をする日までの日数に応じて算定するとされています。年365日で日割りにするという計算方法は、この記事の例で置いた仮の前提です。

項目仮の数字
代金1,000,000円
遅れた日数(60日経過後から支払日まで)30日
利率年14.6%
計算(日割りは365日で計算する仮の前提)1,000,000円 × 0.146 × 30日 ÷ 365日
遅延利息12,000円

代金の額が大きくなるほど、遅延した日数が長くなるほど、金額は膨らみます。なお、手形払の場合は、受注者が手形割引を受けたかどうかにかかわらず、手形の満期日を支払をする日として遅延利息を計算すると公取委は説明しています。

明示は「直ちに」。口頭発注の後追いは認められるか

発注内容の明示(法第4条の明示)について、よくある質問では、電話で注文し、後日に明示する方法が問題ないかが取り上げられています。また、発注時点で内容が決められない事項がある場合は、内容を定めることとなる予定期日などを先に明示する「当初の明示」が認められるとされ、運用の細目が質問と回答で示されています。実際に使うときは、公取委の「よくある質問コーナー(取適法)」の回答本文を読んで運用を決めてください。

発注する会社がしてはいけない「11の禁止行為」

禁止事項は11あります。リーフレットの記載を表にします。

禁止行為内容
受領拒否中小受託事業者に責任がないのに、発注した物品等の受領を拒否する
支払遅延支払期日までに代金を支払わない。手形払等を用いることも含む
減額責任がないのに、発注時に決めた代金を発注後に減らす
返品責任がないのに、受領後に返品する
買いたたき通常支払われる対価に比べて著しく低い代金を不当に定める
購入・利用強制正当な理由なく、指定する物品や役務を強制して購入・利用させる
報復措置公取委、中小企業庁、事業所管省庁に違反行為を知らせたことを理由に、取引数量の削減や取引停止などの不利益な取扱いをする
有償支給原材料等の対価の早期決済有償支給した原材料等の対価を、代金の支払日より早く支払わせる
不当な経済上の利益の提供要請自己のために、金銭や役務などを不当に提供させる
不当な給付内容の変更ややり直し責任がないのに、発注の取消しや内容の変更、無償のやり直しや追加作業をさせる
協議に応じない一方的な代金決定価格協議の求めに応じない、必要な説明をしないなど、一方的に代金を決める(新設)

旧法の説明(J-Net21の2022年版)では、禁止行為は11項目で、その一つに「割引困難な手形の交付の禁止」(繊維業は90日、その他の業種は120日を超える手形)が入っていました。改正後は手形払そのものを認めない形になり、割引困難な手形に係る規制は廃止されています。同じ「11」でも、中身が入れ替わっている点に注意が必要です。

新しく加わった2つの禁止を、具体例で読む

2026年1月の改正で、実務への影響が最も大きいのは、協議に関するルールと、支払手段に関するルールです。

協議に応じない一方的な代金決定

公取委のリーフレットは、協議を明示的に拒む場合だけでなく、協議の求めを無視したり、協議を繰り返し先延ばしにしたりして、協議を困難にさせる場合も違反になると書いています。よくある質問(Q134からQ137)の要点を表にします。

場面公取委の整理
協議したうえで、受注者が求めた値上げ額を受け入れなかった実質的な協議が行われたかで判断する。必要な説明や情報の提供をせずに決めれば違反。受け入れられない場合は、理由や考え方の根拠を十分に説明する必要がある
協議せずに、発注者が妥当と考えるコスト上昇分を反映して値上げした受注者の申入れ額を下回る額を一方的に決めれば、違反のおそれがある。協議を行ったうえで決める必要がある
入札やせり上げで価格を決める主要な取引条件が先に確定している、指名によらない複数の候補者が価格を提示できる、候補者が価格の決め方など判断に必要な情報を知りうる、の三つを満たせば、一方的な決定には当たらない
受注を見送るなら取引を減らす、と示唆して価格を決める受注者が自由な意思で判断したといえないため、問題となる
協議の記録の残し方受注者は書面や電子メールなど形に残る方法で協議を求め、記録を保存することが望ましい。発注者も説明内容や協議経過を議事録に残すことが望ましい

受注者の側から見ると、価格の相談は口頭ではなく、メールなど記録の残る形で出すことが、公取委の示す実務上の勧めになります。

手形払等の禁止

リーフレットは、手形による代金の支払いは違反(支払遅延に該当)と書いています。さらに、電子記録債権やファクタリングも、支払期日(最長で受領日から60日以内)までに代金満額相当の現金を得ることが困難なものは違反になります。違反となる例は次の二つです。

違反となる例内容
満期日が支払期日より後満期日が代金の支払期日よりも後に来るため、受注者が割引を受けるなどの行為をしないと現金にならない
受取手数料などの負担が受注者に生じる決済に伴う手数料を受注者が負担することになる

ただし、決済に伴って一時的に受取手数料等の負担が生じる場合でも、あらかじめ書面等による合意をしたうえで、支払期日までに委託事業者がその負担分を補填し、受注者が支払期日に代金満額相当の現金を受け取れる状態になっていれば、問題とはならないとされています。この場合は、取引の記録(7条記録)にも残す必要があるとよくある質問は説明しています。

説明資料には、期間の比較が図で示されています。4月1日に受領し、60日後に手形を交付し、手形サイトがさらに60日の場合、現金を受け取るまでに120日かかります。改正後は、支払日までの60日がそのまま現金受領までの期間になります。

仮の数字で、資金繰りへの影響を確かめます。月に300万円の代金を受け取る受注者を考えます。

項目手形払(旧来の慣行の例)取適法のルール(現金払)
受領から支払日まで60日60日以内
支払日から現金化まで60日(手形サイト)0日
受領から現金化まで120日60日以内
現金化が遅れる60日分の代金(毎月300万円が続く仮定)約600万円が常に未回収手形サイト分の600万円は不要

数字は説明のための仮のものですが、手形サイトの分だけ資金が常に寝る、という構造がわかります。

振込手数料を、受注者に負担させてはならない

リーフレットには、もう一つ重要な点が書かれています。中小受託事業者との合意の有無にかかわらず、振込手数料を受注者に負担させ、代金から差し引くことは違反(減額に該当)になる、という点です。よくある質問も、業界の慣行として「歩引き」や「手数料」の名目で差し引いている場合も、名目にかかわらず、発注時に決めた代金を発注後に減ずれば違反だと説明しています。

減額に関するよくある質問の要点を、表に並べます。

場面公取委の整理
契約書に「歩引き5%を差し引く」と事前に合意してある受注者に責任がないのに代金を減ずる行為は、事前の書面合意があっても問題となる
単価の引下げに合意した後、すでに発注済みの分にも新単価を使う発注時の単価を後から下げることになり、減額として問題。たとえば「4月1日発注分から新単価」と7月に合意して遡って適用すれば減額に当たる
新単価の見積書を受注者が出した見積書の提出だけでは合意したことにはならない
ボリュームディスカウント事前に書面で内容を合意し、代金と割戻金の関係を関連付けるなど、複数の条件を満たす場合に限り、減額に当たらないとされる。現時点で合理的な理由に基づく割戻金と認められるのはこれだけ
決算対策で単価を一律に引き下げる個別の発注内容の違いを考えずに一律で引き下げると、買いたたきに当たるおそれがある

受領日と支払期日の数え方で、つまずきやすい点

60日のルールは、数え方を間違えやすいところです。よくある質問から、判断の分かれ目を表にします。

場面公取委の整理
納期より前に納品された原則は納品時が受領日。ただし、受注者の要請で納期前に納められ、仮受領とした場合は納期を受領日としても問題ない。納期前に検査したときは、検査終了時を受領日としてよいが、検査中に納期が来たら納期が受領日
請求書が遅れて届いた請求書の提出の有無にかかわらず、受領後60日以内に定めた支払期日までに払う必要がある。社内手続で請求書が必要なら、集計に十分な期間を確保し、遅れれば督促して遅延にならないようにする
受注者から「当月分を翌月納入分として扱って」と頼まれた依頼や合意があっても、受領日から60日以内の支払期日までに払う必要がある
商社が間に入っているが、事務手続の代行だけ商社は委託事業者・受注者にならず、発注者と外注先の関係が本法の対象。商社に払っても、外注先に支払期日までに届いていなければ支払遅延
受領後に給付が仕様と違うと分かり、支払前に返品した当初の受領日から60日以内に払う必要はなく、再納品した時点の受領日が起算日になる
使った分だけを翌月末に払う方式(使用高払方式など)不明示や支払遅延が起きるおそれが強く、基本的に認められない

情報成果物(ソフトウェアやデザインなど)の検査が長引く場合は、4条明示した納期より前に提出を指示して確認する、という扱いがよくある質問に示されています。検査で問題ないことを確認してから払う、という運用をそのまま続けると、受領から60日を超えるおそれがあるため、事前の仕組みづくりが必要です。

違反したらどうなるか。勧告と社名の公表

法律に違反した発注者に対して、公正取引委員会は是正の勧告を行います。J-Net21の旧記事は、中小企業庁と公正取引委員会が取引を定期的に調査し、違反した親事業者には是正勧告と指導を行い、勧告を受けた親事業者は社名が公表され、罰金を命じられる場合がある、と説明しています。

勧告の中身について、公取委のよくある質問(Q138)は、過去の事例を参考に次のような例を挙げています。

違反の種類勧告で求められる内容の例
受領拒否まだ受領していない給付を速やかに受領する
支払遅延代金と遅延利息を支払う
減額減じた額と遅延利息を支払う
返品返品した物のうち引き取っていない物を再び引き取る
買いたたき受注者と協議し、通常支払われる対価に比べて著しく低くない額まで、低くした時期に遡って引き上げる
購入・利用強制購入した物を引き取る、または購入・利用に要した金額を支払う
有償支給原材料等の早期決済、不当な経済上の利益の提供要請控除した金額や提供させた金額を支払う
共通の措置取締役会等での決議による確認、社内体制の整備、役員・従業員への周知、中小受託事業者への通知

改正では、勧告時点ですでに違反が是正されている場合でも、再発防止策などを勧告できるよう規定が整備されました。また、遅延利息の対象に、代金を減じた場合が追加されています。これらは、「勧告までに払ってしまえば済む」という考えが通りにくくなったことを意味します。

運送の委託も対象に。物流の取引で何が変わるか

改正で、発荷主が運送事業者に物品の運送を委託する取引が、新たに「特定運送委託」として対象に加わりました。旧法は、運送の「再委託」が対象でした。説明資料は、立場の弱い物流事業者が、荷役や荷待ちを無償で行わされている問題が顕在化していることを改正理由に挙げています。

よくある質問には、特定運送委託の細かな線引きも載っています。たとえば、自社の拠点間(工場から物流センターなど)の運送や、宅配便を利用する場合の扱い、運送と一体で行う養生や固縛が「運送」に含まれるかといった質問です。回答の本文は公取委のページで確認してください。着荷主の要請で、委託内容にない荷下ろしや長時間の荷待ちを無償で行わせる場合に、発注者が気をつける点も、質問として挙がっています。

同時に改正された「受託中小企業振興法」とは

取適法と同じ改正法で、下請中小企業振興法も「受託中小企業振興法」に改められました。こちらは、違反を取り締まる法律ではなく、取引の適正化や中小企業の振興を進める枠組みです。説明資料の内容を表にします。

項目内容
措置経済産業大臣が「振興基準」を定める。事業所管大臣が事業者に指導・助言する。調査と公表を行う
振興基準の例「労務費の指針」に沿って十分に協議を行う、原材料費・エネルギー費の全額転嫁を目指す、など
公表の例価格交渉・転嫁の状況の企業リストを、社名入りで公表(延べ985者と資料に記載)
改正点1二以上の取引段階にある事業者が作る振興事業計画を、承認・支援できる旨を追加(多段階の連携)
改正点2国と地方公共団体が連携して取り組む責務を規定
改正点3指導・助言をしても改善しない事業者に、より具体的な措置を示して実施を促す「勧奨」ができるようにする
改正点4適用対象に、運送の委託と、従業員数の大小関係がある法人同士の取引を追加

振興法は、資本金の大小関係がない取引や、中小企業同士の取引も、支援や指導・助言・勧奨の対象に加えている点が、取適法より広い設計です。説明資料は、価格転嫁の割合が、サプライチェーンの取引段階が深くなるほど低くなることを示しています。価格交渉促進月間(2024年9月)の結果として、1次請けの転嫁率が51.8%、2次請けが46.1%、3次請けが39.7%、4次請け以上が35.7%です。トラック運送業の転嫁率は29.5%と、全業種で最下位でした。

受注する側が、いまできること

取適法は、受注者に何かを申請させる制度ではありません。受注者の側でできることを、時系列で表にします。

場面やること
新しい取引の前発注書や契約書に、代金の額、支払期日、支払方法が書かれているか確認する。従業員数を聞かれたら、記録に残る形で回答する
納品のとき納品日と検収日の記録を残す。受領日がいつかは、支払期日の起算に直結する
請求のとき請求書の提出が遅れても支払期日は変わらないが、早く出すに越したことはない
値上げを頼みたいとき原材料費、労務費、エネルギー費の上昇分を整理し、メールなど記録に残る方法で協議を申し入れる
代金が引かれていたとき名目(歩引き、手数料、協力金など)と金額を、発注書・請求書・入金額と突き合わせる
支払いが手形・長期の債権になっていたとき満期日が支払期日より後になっていないか、手数料を引かれていないか確認する
不利益な扱いが心配なとき違反を公取委などに知らせたことを理由に取引を減らすことは、報復措置として禁止されている

2026年1月以降に発注された取引から、新しい禁止行為が適用されます。それ以前に発注されたものは、旧法の扱いとなる点も、確認しておいてください。

発注する側が、いまできること

発注者の側は、規定の理解だけでは足りず、社内の運用を変える必要があります。

見直す箇所内容
支払サイト受領日から60日以内に支払期日が収まっているか。月末締め翌月末払いなどが、納品日によっては60日を超えないか
支払手段手形を使っていないか。電子記録債権や一括決済方式で、満期日が支払期日より後になっていないか、受取手数料が受注者の負担になっていないか
振込手数料受注者の代金から差し引いていないか
価格交渉の窓口価格の相談を受けたときに、誰がどう答えるか。説明と記録の様式を決めておく
発注書電子メールなどで明示してよいことになったので、発注システムの項目や、未定事項の扱いを整える
従業員基準の確認取引先の従業員数が基準付近のときに、確認の方法を決める
社内研修勧告の例にも、発注担当者に取適法の研修を行うことが含まれている

向く人・向かない人、類似の制度との違い

この法律を使う(頼る)ことが、自社の状況に合うかを表にします。

状況判断
製造・加工・修理・運送・ソフトウェアやデザインの制作を、資本金や従業員の多い会社から受けている対象になる可能性がある。資本金・従業員の基準を確認する
受注先が、自社より規模が小さい、または同規模取適法の対象にならないことがある。受託中小企業振興法の枠組みや、独占禁止法の考え方を確認する
建設工事の再委託を受けている取適法の対象外。建設業法など別の法令が関わる
金銭の支援(補助金)を求めているこの法律には金銭給付がない。別の補助金制度を探す
発注者として、取引先の従業員数や資本金の把握に不安がある公取委の簡易診断ツールで、委託事業者・中小受託事業者の範囲を確かめられる

類似制度との違いを、整理します。

制度役割
取適法発注者の義務と禁止行為を定める。違反は勧告の対象
受託中小企業振興法取引の適正化と中小企業の振興を進める。指導・助言・勧奨、調査と公表
独占禁止法(物流特殊指定など)優越的地位の濫用などを規制。取適法の対象外となる取引も扱う(公取委の資料では、取適法の対象外の荷主・運送の取引は、独占禁止法の物流特殊指定で対応してきたとされている)
補助金・助成金設備や人材への金銭支援。取引ルールとは別の枠組み

よくある質問

質問回答
下請法はなくなったのか名称が改められ、取適法として2026年1月1日に施行された。旧法の義務や禁止行為の多くは引き継がれ、新たな禁止と対象の拡大が加わった
書面で発注しないといけないか書面または電子メールなどの電磁的方法で明示する。改正で、受注者の承諾の有無を問わず電磁的方法によることができる
支払期日はいつまでか物品等を受領した日から起算して60日以内で、できる限り短い期間内
遅延したときの利息は年率14.6%。減額した場合も、遅延利息の対象になった
手形で払うと違反か取適法の対象取引では、手形払は支払遅延として違反になる
振込手数料を差し引いてよいか受注者との合意があっても、差し引くことは減額として違反になる
発注側が違反を認めたら、どうなるか勧告の内容として、代金の支払、原状回復、社内体制の整備、取引先への通知などが挙げられている
どこで確認できるか公正取引委員会の取適法のページ(https://www.jftc.go.jp/toriteki/index.html)に、法の概要、リーフレット、ガイドブック、よくある質問が掲載されている

この記事を使うときの注意と、確認先

この記事は、公正取引委員会の取適法に関するページ、取適法リーフレット(令和7年8月・10月)、改正法の説明資料、よくある質問コーナーと、中小機構J-Net21の旧記事を読んで書いています。個別の取引が取適法に当たるか、どの行為が違反に当たるかは、取引の実態によって変わります。判断が必要な場合は、公正取引委員会の「取適法に関する御質問等の窓口」や、公取委のガイドブック、中小企業庁の案内で、最新の内容を確認してください。窓口は、https://www.jftc.go.jp/partnership_package/toritekihou.html に案内があります。

補助金や税制の制度と違い、この法律には申請の締切も、交付額もありません。守られているかどうかは、日々の発注書、納品記録、入金の記録の積み重ねで決まります。まず自社の直近の取引を一つ取り出して、発注日、受領日、支払期日、支払方法、差し引かれた金額を、表に書き出してみてください。それだけで、見直すべき点が見えてくる場合が多いはずです。

ProdX Crowd編集部は、補助金の検索ページに載っている制度のうち、金銭の給付ではなくルールを定めた制度についても、位置づけを明示して整理しています。

この制度を一言でいうと

「下請代金支払遅延等防止法」は、中小企業基盤整備機構(J-Net21 中小企業支援施策)が実施する補助金・助成金です。対象の地域は全国です。

本記事は、2022年1月時点の「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」に関する内容です。下請法は改正され、2026年1月1日から「中小受託取引適正化法(取適法)」として施行されています。現在の制度内容や実務上の変更点については、以下の記事をご確認ください。 中小受託取引適正化法(取適法)(第1回)ー下請法から何が変わったのか?ー 中小企業、小規模事業者が親事業者から受注して取引を行う場合、下請事業者となる中小企業、小規模事業者は、親事業者から一方的に値下げや支払遅延を要求されることがあります。そこで、立場の弱い下請事業者を守るためにできた法律が、「下請代金支払遅延等防止法」です。

受付の期間は、通年(随時)で受け付けています。

制度名下請代金支払遅延等防止法
実施機関中小企業基盤整備機構(J-Net21 中小企業支援施策)
種類補助金・助成金
対象地域全国
受付期間通年(随時)で受け付けています

「下請代金支払遅延等防止法」の対象になる方

対象になるかどうかを、この制度で定められている条件ごとに整理します。

対象かどうかを、この順に確認します
  1. 1地域全国
  2. 2規模従業員数の制約は示されていません
確認することこの制度の内容
地域全国
規模従業員数の制約は示されていません
この制度の文章にある言葉ProdX Crowd編集部の見方
中小企業中小企業者・小規模事業者の定義に当たることが条件です。業種ごとに、資本金や従業員数の上限が決まっています。自社が当たるかを、定義の表で確認します。

申請の方法と、そろえる書類

この制度の文章にある言葉ProdX Crowd編集部の見方
第1回公募が複数回に分かれています。回ごとに、期間、予算、要件が変わることがあるため、自社が申請する回の定めを、確認します。

「下請代金支払遅延等防止法」の手続きの流れと日程

この制度は通年で受け付けられています。予算がなくなり次第、受付を終了する場合があります。

手続きの流れ
  1. 申請計画書・見積書を提出
  2. 審査1〜3か月
  3. 交付決定ここから発注できる
  4. 発注・実施期間内に支払いまで
  5. 実績報告証拠書類を提出
  6. 検査・確定補助額が決まる
  7. 入金お金が入るのは最後

発注・契約は「交付決定」の後。お金が入るのは、最後の「入金」です。

「下請代金支払遅延等防止法」についてのよくある質問

Q&A下請代金支払遅延等防止法

経営者のイメージ写真
経営者

Q. 下請代金支払遅延等防止法の受付期間はいつですか?

解説役のイメージ写真
ProdX Crowd編集部
A.

通年で受け付けています。予算の状況により終了することがあるため、早めに実施機関へ確認します。

この制度を検討するときの確認リスト

確認項目状況
対象の地域(全国)に、事業所がある□ はい □ いいえ
交付決定(または承認)の前に、発注・契約をしない□ はい □ いいえ
後払いの資金繰り(つなぎ資金)の目処が立っている□ はい □ いいえ

情報の確認元:中小企業基盤整備機構(J-Net21 中小企業支援施策)の公開情報。最新の募集状況・申請書類は、実施機関等のページで入手できます。 情報取得日:2026/10/12。