支援事例金属加工 / 熟練工程の標準化・歪みの抑制・複雑形状への対応

熟練溶接に依存していた工程を見直し、複雑形状・薄板加工へ対応

建築金物などの受注生産を手がける金属加工企業が、複雑な形状の溶接で生じる歪みと、その修正のための工程の追加、熟練者への依存、薄板加工の設備上の制約を、加工方法そのものを変える設備投資によって見直し、熟練者にしかできなかった仕事を組織として再現しやすくする取り組みを整理した、支援事例です。

業種
金属加工
支援テーマ
熟練工程の標準化
区分
公的支援制度・設備投資
公的支援制度
公的支援制度を活用
金属加工のイメージ
イメージ画像です。実際の支援先を撮影したものではありません。

+OUR SUPPORT

この事例での、ProdX Crowdの支援

事業の構想と計画を、経営の判断としてたどれるように整理する支援を行いました。支援の範囲は構想・計画の整理までで、実施や成果を示すものではありません。

  • 課題と真因の整理表面の問題と、その奥の原因を切り分けました。
  • 強みの棚卸しと打ち手の検討すでにある経営資源を、どう使うかを複数の選択肢で比べました。
  • 取り組みの具体化進める順序と、現場で何が変わるのかを、言葉と図で整理しました。
  • 実行の条件の整理法令・安全・体制など、進める前に確かめることを洗い出しました。

01STRENGTHS

既存事業の強み

  • 1図面からの個別製作一品ごとの要望に応える、受注生産の対応力があります。
  • 2顧客要望への対応仕様の相談に応じ、実現の方法を検討します。
  • 3薄板から大型材まで扱える材料と寸法の幅があります。
  • 4短納期対応顧客の工程に合わせて素早く納めます。
  • 5継続的な設備投資設備を更新し、能力を維持してきた姿勢があります。

02CHAIN

課題の連鎖|複雑な形状を溶接すると、何が起きるか

この計画の出発点は、複雑な形状の製品を製作するときの、具体的な工程の問題でした。

図解|BEFORE|熟練者に依存した流れ
  1. 1熟練者
  2. 2長時間の溶接
  3. 3熱による歪み
  4. 4修正・手直し
  5. 5歩留まりの低下
  6. 6納期の長期化

一つの工程の問題が、連鎖して、納期にまで及ぶ。

溶接では、熱が加わることで、材料が変形します。複雑な形状ほど、溶接する箇所と時間が増え、歪みも大きくなります。歪んだ部材は、修正が必要になり、修正しきれなければ、作り直しになり、歩留まりが悪くなります。

03REAL ISSUE

本当の課題|熟練者の腕に、品質と納期が依存している

整理すると、問題の本質は、設備の古さではなく、「品質と納期が、熟練者の判断と技能に強く依存する工程設計」にあります。熟練者が不足すれば、同じ品質で作れず、納期も延びる。若い人を育てるにも、時間がかかる。

この構造のまま、複雑な形状の案件を受注し続けることは、熟練者への負担を増やし、事業の拡大を制限します。

04PROBLEM TREE

課題を掘り下げる

目に見える問題から、その原因、さらにその奥にある経営上の制約まで、順に掘り下げて整理しました。表面の症状に対処するだけでは、同じ問題が形を変えて戻ってくるためです。

  • 1表面|歪みと手直しで、納期が延びる複雑形状ほど、溶接後の修正が増えます。
  • 2原因|加工方法が熱の影響を受けやすい長時間の溶接で、材料が歪みます。
  • 3さらに奥|歪みの対策に、熟練技能が必要曲げ工程の追加と判断が、特定の人に依存します。
  • 4経営上の制約熟練者の人数が、受けられる案件の上限になります。

05BUSINESS BEFORE

支援前の事業

この企業は、建築金物などを、図面に基づいて一つずつ製作する受注生産型の事業を営んでいます。パネル、フード、建築金物、大型材など、薄板から大型の材料まで、顧客の要望に合わせて製作します。短納期への対応と、継続的な設備投資が、事業の特徴です。

06SECOND ISSUE

二次的な課題|歪みを避けるための工程が、新しい課題を生む

歪みを避けるために、曲げの工程を加える対応も行われていました。しかし、これは、別の課題を生みます。

  • 1工程の増加曲げの工程が加わることで、段取りと作業の手順が増えます。
  • 2熟練技能への依存歪みを見越して、曲げ方や順序を判断するには、経験が必要です。
  • 3属人化その判断ができる人が限られるため、特定の人に仕事が集中します。
  • 4人手不足熟練者が不足すれば、受けられる案件が制限されます。

07THIN SHEET

薄板加工の設備上の制約

さらに、薄板の加工には、既存設備の性能上の制約がありました。薄い材料は、熱の影響を受けやすく、歪みやすい。そのため、既存の設備では、薄板の複雑形状に対して、品質や効率を十分に得られない場面がありました。

08INVESTMENT

設備投資で目指す状態

新しい設備によって、加工方法そのものを見直すことが、投資の中心です。目指す状態は、次のとおりです。

  • 1溶接の歪みの低減熱の入り方を抑え、歪みを小さくします。
  • 2薄板への対応薄い材料でも、安定した品質で加工できるようにします。
  • 3複雑形状への対応従来は難しかった形状を、製作の対象にします。
  • 4作業時間の短縮溶接と修正に費やす時間を減らします。
  • 5歩留まりの改善作り直しを減らします。
  • 6未経験者が戦力になりやすい工程熟練の判断に頼る部分を、設備と条件の設定に移します。
図解|AFTER PLAN|工程の再設計
  1. 1新しい加工方法
  2. 2歪みの抑制
  3. 3工程の削減
  4. 4属人性の低減
  5. 5短納期
  6. 6複雑形状の受注が可能に

09NOT REPLACEMENT

「人の置換」ではなく「熟練の再現」

この計画の考え方は、設備で人を置き換えることではありません。熟練者が持つ判断と技能のうち、設備と条件の設定に移せる部分を切り分け、移せない部分は、より高度な設計と判断に、熟練者が集中できるようにする。それによって、熟練者しかできなかった仕事を、組織として再現しやすくします。

工程を分解し、熟練者にしかできない部分と、設備や仕組みに移せる部分を分ける。この視点が、熟練工程の標準化の基本です。

10NEW PRODUCTS

新たに受けられる商品

設備の導入によって、複雑形状の建築金物、モニュメント、アルミの笠木といった、これまで製作が難しかった商品への対応が想定されています。受けられる仕事の種類が広がることは、顧客にとって、「この会社なら難しい形にも応えてもらえる」という新しい信頼につながります。

11PUBLIC SUPPORT

公的支援制度の位置づけ

この構想は、経営課題の特定と事業戦略が先にあり、公的支援制度は、投資を実行する際の資金手段の一つとして検討されるものです。制度の対象・要件・公募の時期・手続きは、公式の情報で確認する必要があります。補助金の有無にかかわらず、その投資が事業として成立するかを先に確かめることが重要です。

12ACTION STEPS

実行に向けた段階(目標)

事業計画で整理された実行の順序を、段階として示します。時期や規模は、策定時点の想定です。

  • 1現在の工程と歪みの把握製品ごとに、溶接・修正・曲げの時間と歩留まりを記録します。
  • 2必要な加工能力の特定歪みの抑制、薄板対応、複雑形状に必要な能力を決めます。
  • 3設備の導入と加工条件の確立試作を重ね、条件を確立し、標準化します。
  • 4新しい商品の受注複雑形状の案件を、顧客に案内して受注します。

13PROCESS COMPARE

工程の比較|歪みの対策に使っていた時間

複雑形状の製作で、どの工程に時間と手間がかかっていたかを、工程の言葉で比べます。

図解|複雑形状の製作工程
従来(熟練に依存)計画(加工方法の見直し)
溶接

長時間・熱が入りやすい

熱の入り方を抑える方法へ

歪みへの対応

曲げ工程を追加して調整

歪み自体を抑え、追加工程を減らす

手直し

修正に時間がかかる

修正の量を減らす

判断

熟練者の経験に依存

条件の設定として共有

人材

熟練者でないと対応が難しい

未経験者も戦力になりやすい

14SKILL SPLIT

熟練者の仕事を分解する

熟練者の仕事を、「設備と条件に移せる部分」と「熟練者が担い続ける部分」に分けて考えます。

  • 1設備と条件に移せる部分溶接の条件の安定、位置決め、繰り返しの精度が必要な作業など、再現性が重要な部分です。
  • 2熟練者が担い続ける部分新しい形状の工程の設計、条件の見直し、品質の最終判断、顧客との仕様の相談など、判断が必要な部分です。
  • 3移す順序いきなりすべてを移さず、再現性の高い部分から、条件を記録し、共有していきます。
  • 4記録の仕組み加工の条件と結果を、誰でも参照できるように記録します。
  • 5教育の設計未経験者が、段階的に習熟できる手順を用意します。

15NEW BUSINESS

新しい商品領域で確認すること

複雑形状の建築金物、モニュメント、アルミの笠木などは、一品ごとの要望が強く、仕様の調整が受注の前から始まります。受けられる仕事が広がるほど、見積りと仕様の確認の質が重要になります。

また、複雑形状の案件は、設計者や建築の関係者から、独自の形が求められる分野です。これまでの顧客に加え、新しい関係者との接点が必要になる可能性があります。営業の方法、事例の見せ方、試作の提案など、設備の導入と同時に整える準備も必要です。

16STAKEHOLDERS

関係者ごとに見る|誰にとって何が変わるか

加工方法の見直しは、社内外の関係者に、それぞれ異なる影響を与えます。

  • 1熟練の技能者歪みの修正の作業が減り、より高度な設計と判断に集中できます。自分の役割が変わることへの理解と、技能の継承の仕組みが必要です。
  • 2未経験の人材条件が設備に設定されている分、早く戦力になりやすくなります。段階的な教育の設計が必要です。
  • 3顧客(設計者・建築の関係者)複雑な形状や薄板への対応が広がり、設計の自由度が上がります。一方で、仕様の確認と見積りの精度が求められます。
  • 4協力会社・材料の仕入先材料の種類や薄板の扱いが増える場合、仕入の仕様の調整が必要になります。
  • 5金融機関設備投資の効果(歩留まり・工程の短縮・新しい受注)について、記録に基づく説明が求められます。

17TAKEAWAY

この事例から分かること

以下は、この事例から一般的に考えられる経営上のポイントです。実際に行った支援内容とは区別しています。

  • 1課題を、工程の言葉で連鎖として書く長時間溶接から納期の長期化まで、どこで何が起きているかを特定します。
  • 2対処のための工程が、新しい課題を生んでいないか歪み対策の曲げ工程が、属人化を生みました。
  • 3熟練者不足の答えを、採用だけにしない熟練者にしかできない部分と、設備に移せる部分を分けます。
  • 4受けられる仕事が広がることは、顧客の信頼につながる複雑形状への対応が、新しい受注の根拠になります。

18HOW TO USE

自社の計画に使うときの読み方|熟練工程を組織で再現する

この事例を、自社の検討に使うときは、業種の違いに引きずられず、構造を取り出して当てはめると役に立ちます。次の問いに、自社の場合を書き込んでみてください。

  • 1熟練者の仕事のうち、条件として書けるものは何か工程を分解し、判断が必要な部分と、再現できる部分を分けます。
  • 2対策の工程が、新しい課題を生んでいないか歪み対策の追加工程が、属人化を生んだように、副作用を探します。
  • 3加工方法を変えると、受けられる仕事はどう変わるか断っている案件を記録し、変更後に受けられるかを確かめます。
  • 4未経験者が戦力になるまでの道筋は何か教育の手順と記録の仕組みを設計します。
  • 5効果をどう測るか歪み・手直し・歩留まり・納期を、導入前後で比べる項目に決めます。

19SUMMARY

この支援で整理した主なポイント

  • 課題の連鎖(長時間溶接→歪み→修正→歩留まり悪化→納期長期化)を工程の言葉で整理した。
  • 歪みを避けるための曲げ工程の追加が、熟練技能への依存と人手不足を生む二次的な課題を明らかにした。
  • 投資の目的を、人の置換ではなく、熟練者にしかできなかった仕事の再現性を高めることに置いた。
  • 複雑形状の建築金物・モニュメント・アルミ笠木などの新しい商品への対応を想定した。

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※掲載事例は、過去の支援内容(事業の構想・計画の整理)をもとに、企業・個人が特定されないよう情報を匿名化・再構成しています。

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