支援事例金属加工 / 商流の転換・設備投資による元請化
自社工場と加工設備を持ち、下請けから元請けへ事業構造を転換
建築用の金属製品などを手がける加工会社が、技術も顧客からの相談もあるのに「自社の工場と設備がないため直接取引できない」という商流の構造に向き合い、新規製品から元請取引を始める取り組みを整理した、支援事例です。営業力の問題ではなく、バリューチェーンの中での位置を変える投資として読み解きます。

- 課題技術と顧客からの相談はあるが、自社の工場・設備がなく、元請を介した取引に限られていた。
- 支援した打ち手自社の工場と加工設備を持ち、既存製品ではなく新規製品から元請取引を始める取り組みとして整理した。
- 目指す状態設備投資を、生産能力ではなく、商流とバリューチェーン上の位置を変える手段として位置づけた。
+OUR SUPPORT
この事例での、ProdX Crowdの支援
事業の構想と計画を、経営の判断としてたどれるように整理する支援を行いました。支援の範囲は構想・計画の整理までで、実施や成果を示すものではありません。
- 課題と真因の整理表面の問題と、その奥の原因を切り分けました。
- 強みの棚卸しと打ち手の検討すでにある経営資源を、どう使うかを複数の選択肢で比べました。
- 取り組みの具体化進める順序と、現場で何が変わるのかを、言葉と図で整理しました。
- 実行の条件の整理法令・安全・体制など、進める前に確かめることを洗い出しました。
01STRENGTHS
既存事業の強み
- 1加工の技術図面を形にする経験と、品質を見極める力があります。
- 2顧客からの相談発注者から直接、相談が寄せられる関係があります。
- 3柔軟な製造の手配設備を借りる形のため、案件に応じた対応ができます。
- 4地域・業界のつながり既存顧客や、業界・地域のネットワークがあります。
02ISSUE
課題|技術も相談もあるのに、直接取引ができない
この会社には、加工の技術があり、顧客から「作れないか」という相談も来ています。それでも直接取引ができないのは、自社の工場と設備がないためです。顧客からすれば、設備のない会社に、納期や品質を直接任せることは難しいからです。
結果として、顧客と自社の間に元請が入ります。顧客、元請、自社という順に仕事が流れ、中間マージンが発生します。
03REAL ISSUE
本当の課題|営業力ではなく、商流の構造である
課題を「営業を強化する」と捉えると、答えがずれます。この会社に不足しているのは営業の努力ではなく、直接取引を受けられる体制、つまり工場と設備です。顧客がいて、技術があり、相談があるのに、受けられない。設備がないことが、商流そのものを決めていました。
だから、解決の中心は、営業の追加ではなく、事業構造の転換になります。
04PROBLEM TREE
課題を掘り下げる
目に見える問題から、その原因、さらにその奥にある経営上の制約まで、順に掘り下げて整理しました。表面の症状に対処するだけでは、同じ問題が形を変えて戻ってくるためです。
- 1原因|元請を介した取引になっている直接の契約を受けられません。
- 2さらに奥|自社の工場と設備がない顧客が直接任せる条件を満たせません。
- 3経営上の制約|バリューチェーン上の位置価格と顧客情報を、自社で持てません。
05STRATEGY
選んだ打ち手と、その理由
計画の最も重要な考え方は、既存の製品を無理に元請取引へ切り替えないことです。既存の取引先との関係を壊さずに、新規の製品から元請取引を始めます。既存の商流を急に変えるのではなく、新しい製品で新しい商流をつくる。この順序が現実的です。
自社工場と設備
既存製品
- 現在の取引を維持
- 関係を壊さない
新規製品
- 元請として直接受注
- 商流を新しくつくる
06BUSINESS BEFORE
支援前の事業|設備を借りて作る加工会社
この会社は、建築用の金属製品などを加工しています。技術はありますが、自社の工場と設備は持っていません。他社の工場と設備を借りて製造する形で事業を行ってきました。商流は、発注者から元請、元請から自社、そして製造、という流れです。
07NEW PRODUCT
新規製品|貨物自動車等に使われるステンレス部品
新規製品は、貨物自動車などに使われるステンレス製品です。既存の顧客から「ステンレスの部品を作れないか」という具体的な相談があります。設備を整えれば応えられる相談が、先にあるということです。
設備を先に揃えて営業を始めるのではなく、顧客の相談があり、設備の制約で応えられず、設備投資をして受注する。この流れは、顧客の声が起点の設備投資(Customer Pull)です。需要の裏付けがあるため、投資の不確実さが小さくなります。
08EQUIPMENT
設備|切断・溶接・仕上げ
必要な設備は、切断、溶接、仕上げの加工設備です。他社の設備を借りていた工程を、自社で持つことになります。工程が自社で完結すれば、納期の調整や品質の管理を自社で行えます。これが、顧客が直接任せられる条件になります。
09SALES
販売の考え方
販売先は、既存の顧客、既存顧客からの紹介、業界団体、地域のネットワークです。新たな営業の仕組みを大きくつくるのではなく、すでにある信頼を起点にします。
10STAKEHOLDERS
関係者ごとに見る|誰にとって何が変わるか
商流の変化は、関係者に異なる意味を持ちます。
- 1発注者窓口が一つになり、直接相談できます。
- 2現在の元請新規製品の領域では、役割が変わります。
- 3社内製造・品質・調達の責任が増えます。
11ACTION STEPS
実行に向けた段階(目標)
事業計画で整理された実行の順序を、段階として示します。時期や規模は、策定時点の想定です。
- 1現在の商流の整理誰に何を、どう納めているかを書き出します。
- 2新規製品の需要確認顧客の相談を、数量と単価で確かめます。
- 3設備の整備切断・溶接・仕上げの設備を整えます。
- 4新規製品の受注開始元請として直接受注します。
12VALUE CHAIN
バリューチェーン上の位置を見る
製造業では、自社がバリューチェーンのどこにいるかで、利益の取り方が変わります。発注者、元請、自社、製造という流れの中で、自社が「製造」の位置にいる限り、価格と顧客情報は上流の元請が持ちます。自社の工場と設備を持つことで、自社は「受注して製造する」位置に移ります。
これは、設備という手段で、事業の位置を変える投資です。生産能力を上げるための投資とは、見るべき指標が変わります。生産量ではなく、直接取引の比率や、価格を自社で決められる範囲を見ます。
13FACT PLAN
資料の読み分け|事実・計画・前提・編集部の解釈
同じ重みで読まないために、次の4つに分けて整理しました。公開する説明は、この区別を保ったものです。
- 1事実(FACT)他社の工場と設備を借りて製造していること。顧客から直接の相談があること。
- 2計画(PLAN)自社の工場と設備の整備、新規製品での元請取引の開始。
- 3前提(ASSUMPTION)取引先数、単価、回数、受注の見込み。
- 4編集部の解釈(INFERENCE)「課題は営業力ではなく商流の構造」は、資料から合理的に読める整理です。
14TAKEAWAY
この事例から分かること
以下は、この事例から一般的に考えられる経営上のポイントです。実際に行った支援内容とは区別しています。
- 1設備投資は、生産能力だけを変えるものではない企業がバリューチェーンのどこに位置するかを変えます。
- 2課題が営業にあるとは限らない商流の構造が課題のことがあります。
- 3既存を切り替えず、新規から変える関係を壊さずに構造を変えられます。
15HOW TO USE
自社の計画に使うときの読み方|下請けからの脱却
この事例を、自社の検討に使うときは、業種の違いに引きずられず、構造を取り出して当てはめると役に立ちます。次の問いに、自社の場合を書き込んでみてください。
- 1自社と顧客の間に、誰がいるか商流を書き出します。
- 2直接取引できない理由は、営業か、設備か真因を特定します。
- 3新しい商流は、新製品から始められるか既存を壊さない順序を考えます。
16SUMMARY
この支援で整理した主なポイント
- 課題は営業力ではなく、自社の工場・設備がないために直接取引できない商流の構造。
- 中間に元請が入るため、中間マージンが発生し、顧客情報も届きにくかった。
- 既存製品を急に切り替えず、新規製品(ステンレス部品)から元請取引を始める計画。
- 顧客からの具体的な相談が先にある、顧客の声が起点の設備投資(Customer Pull)。
- 設備投資の意味は、生産能力に加えて、バリューチェーン上の位置を変えること。
17RELATED SERVICES
関連するサービス
※掲載事例は、過去の支援内容(事業の構想・計画の整理)をもとに、企業・個人が特定されないよう情報を匿名化・再構成しています。
18RELATED CASES
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加工機ではなくコンプレッサーが生産能力を制限していた金属加工会社の設備投資
運転時間の変化を「稼働可能時間の増加」として扱い、実際の生産量や労働生産性とは分けて評価する計画として描いた。
- 当初の課題
- 取引先から新しい部品の量産の引き合いがあるが、コンプレッサーの稼働の制約で加工機を長時間動かせず、受注の機会を失っていた。
- 支援した打ち手
- 旧型コンプレッサーを更新し、稼働可能な時間を広げて量産対応と受注機会の拡大につなげる取り組みとして整理した。
- 目指す方向
- 運転時間の変化を「稼働可能時間の増加」として扱い、実際の生産量や労働生産性とは分けて評価する計画として描いた。
車両仕上げ作業を止めていた空気圧供給の制約を解消し、対応台数を増やす
作業時間の短縮・処理能力・生産性など異なる意味の数値が混在することを整理し、定義を揃えて評価する計画として描いた。
- 当初の課題
- 追加の引き合いがあるが、コンプレッサーの能力不足で連続稼働ができず、複数人の並行作業も難しかった。
- 支援した打ち手
- 業務用コンプレッサーを導入し、連続稼働と複数の作業者への空気供給を可能にして、対応台数と紹介営業の効果を高める取り組みとして整理した。
- 目指す方向
- 作業時間の短縮・処理能力・生産性など異なる意味の数値が混在することを整理し、定義を揃えて評価する計画として描いた。
医療向けに培ったVR技術を量産化し、ゲーム市場へ展開
研究・医療教育・量産・ゲーム市場という成長の順序を、一つの経営ストーリーとして描いた。
- 当初の課題
- 技術と需要はあるのに、手作業中心の製造が量産のボトルネックになっていた。
- 支援した打ち手
- 製造工程のデジタル化で量産能力をつくり、同じコア技術を医療BtoBからゲームBtoCへ移す二段階の取り組みとして整理した。
- 目指す方向
- 研究・医療教育・量産・ゲーム市場という成長の順序を、一つの経営ストーリーとして描いた。
同じような課題を検討している方へ
同じ業種・同じ取り組みでなくても構いません。設備投資、新規事業、販路開拓、AI活用など、現在考えていることを伺い、まず何を整理すべきか一緒に考えます。
補助金・経営支援顧問

