支援事例飲食業 / 販路開拓・高付加価値戦略・無人販売・事業承継

「回転率を上げる」ではなく、価値を高める。人気ラーメン店の新しい販路づくり。

住宅地で少席数のラーメン店を営み、無化調で複数の塩・昆布・鶏・魚介を組み合わせた独自のスープを持つ店が、コロナ禍と原材料・光熱費・人件費の上昇のなかで、値上げだけでも人員を増やすテイクアウトでもない道として、冷凍商品を24時間・非対面で販売できる無人の物品併売機という販路を構想した、支援事例です。

業種
飲食業(ラーメン)
支援テーマ
販路開拓
区分
経営コンサルティング
飲食業(ラーメン)のイメージ
イメージ画像です。実際の支援先を撮影したものではありません。

+OUR SUPPORT

この事例での、ProdX Crowdの支援

事業の構想と計画を、経営の判断としてたどれるように整理する支援を行いました。支援の範囲は構想・計画の整理までで、実施や成果を示すものではありません。

  • 課題と真因の整理表面の問題と、その奥の原因を切り分けました。
  • 強みの棚卸しと打ち手の検討すでにある経営資源を、どう使うかを複数の選択肢で比べました。
  • 取り組みの具体化進める順序と、現場で何が変わるのかを、言葉と図で整理しました。
  • 実行の条件の整理法令・安全・体制など、進める前に確かめることを洗い出しました。

01STRENGTHS

会社が持っていた強み

この店の競争力は、一つの要素ではなく、いくつかの要素が組み合わさったところにあります。

  • 1独自のスープ複数の素材を組み合わせたスープは、他店が簡単に真似できる要素ではありません。「ここでしか食べられない」という理由が、価格の比較から顧客を遠ざけます。
  • 2価格以上の品質と居心地少席数であることで、一人ひとりの顧客に目を配れます。落ち着いて食事ができる環境は、リピーターの比率の高さにつながっています。
  • 3接客味だけでなく、店での体験全体が評価されているため、顧客は味以外の理由でも店を選びます。
  • 4メディア掲載による認知広告費をかけずに、新規の顧客と接点を持てる機会になっています。

02CORE ISSUE

本質的な経営課題

本質的な課題は、「店内の来客数に売上を頼る限り、席数と営業時間と、店主の体力で決まってしまう」ことです。席数の少ない店は、客が増えても席が足りません。

そこで、商品の価値を高めることと、店舗の外に販路をつくることを、同時に進める必要がありました。単純な値上げでは足りず、店舗の外に、店に来られない人にも商品を届ける道が必要でした。

03STRATEGY

選んだ打ち手と、その理由

検討された選択肢のうち、一般的なテイクアウトは、売上の面では分かりやすい方法です。しかし、店に立つスタッフが対応する時間が増え、調理と提供の両方に負荷がかかります。人員を増やせば費用が増えますし、忙しさのなかで、店の味や接客の質が下がるリスクもあります。

選ばれた打ち手は、食品も販売できる物品併売機、いわゆる無人販売の販路です。店舗で提供している商品の一部を、冷凍や保存ができる形にして、24時間、非対面、無人で購入できる販路をつくる計画です。

これは単なる「自動販売機の導入」ではありません。店の人気商品を商品化し、店舗の外で販売し、新しい顧客との接点をつくり、その顧客が店舗に来る動機をつくる。販売機そのものが広告の役割も果たすという、マーケティングの導線として設計されています。

店舗から無人販売、そして店舗認知へ
  1. 1店舗|人気の商品
  2. 2冷凍・保存できる形に商品化
  3. 3無人販売|24時間・非対面
  4. 4新規顧客との接点が生まれる
  5. 5店舗の認知・来店につながる

販売機が、商品の売り場と店の広告を兼ねる。

04COMPANY / BUSINESS

どのような会社だったのか

この事業者は、住宅地に立地する、席数の少ないラーメン店です。大規模なチェーン店のように多くの席で多くの客を回すのではなく、限られた席で、一杯ずつ丁寧に提供する営業のかたちをとっています。

商品の最大の特徴は、スープです。化学調味料を使わない無化調を基本に、複数の種類の塩、昆布、鶏、魚介類などを組み合わせて、独自の味をつくっています。一般的な低価格・高回転型のラーメン店とは異なり、「価格以上の品質」「居心地」「接客」を重視してきました。

主な顧客は、近隣に住む人々、ファミリー、会社員、学生、女性、子どもなど、幅広い層です。リピーターの比率が高く、メディアに掲載されたことをきっかけに来店する人もいます。地域に根ざしながら、遠方から訪れる動機もつくれている店と言えます。

05BACKGROUND

経営環境に何が起きていたのか

コロナ禍で、店内で食事をする客の数が減り、店内売上が落ち込みました。さらに、原材料の価格、光熱費、人件費といった費用が上昇しています。品質にこだわる店ほど、素材の質を落とせないため、費用の上昇の影響を強く受けます。

この状況で一般的に考えられる対応は、価格を上げることです。しかし、価格を上げるだけでは、顧客が離れるリスクがあります。価格の上昇に見合う、あるいはそれ以上の価値を、顧客が感じられる状態をつくらなければなりません。

06VISIBLE PROBLEM

当初見えていた問題

経営者が認識していた問題は、店内の売上が落ちたこと、そして費用が上がったことでした。表面的には、「売上を回復させて、利益を確保する」ことが課題に見えます。

07KEY QUESTIONS

事業計画を考える上で整理した論点

支援では、次のような論点が整理されました。

  • 1何を売るのか店で人気の商品の一部を、冷凍・保存ができる形にした商品として販売できるか。
  • 2誰に売るのか近隣の住民だけでなく、店に来る機会のない人、時間帯が合わない人にも届くか。
  • 3どの手段で売るのかテイクアウト、無人の販売機、ほかの販売方法を、人員と品質の面から比べる。
  • 4品質をどう守るか店で提供する味と、商品化した味の間で、品質を落とさない方法は何か。
  • 5店舗とどうつなげるか商品を買った人が、店にも来たくなる導線をどうつくるか。
  • 6技術をどう残すか創業者の味と考え方を、後継者に引き継ぐ方法を、事業の中でどう設計するか。

08EXISTING ASSETS

新しい販路に活用できる経営資源

新しい販路は、ゼロからつくるものではありません。店がすでに持っている資産を、店の外に出すものです。

  • 1人気の商品常連の顧客に支持されている味は、そのまま商品になる力を持っています。
  • 2リピーターと認知店を知っている人が多いことは、新しい販路で購入される理由になります。
  • 3メディアに掲載された実績初めて商品を見る人にとって、安心して買える材料になります。
  • 4既存の不動産資産販売機を置く場所として活用する可能性が、計画では検討されています。

09MARKET / CUSTOMER

どの顧客・市場を狙ったのか

想定された顧客は、近隣の住民、ファミリー、会社員、学生など、すでに店を利用している層に加え、店に来る時間がない人や、店の存在をまだ知らない人です。夜遅くや早朝、定休日など、店が開いていない時間帯に購入したい人にも、無人販売は対応できます。

既存の代替手段としては、店内での食事、通常のテイクアウト、通販が考えられます。また、品質が低下する懸念もありました。

10SERVICE / PRODUCT DESIGN

商品・サービスをどう設計したのか

商品設計の核心は、「店の味を、品質を落とさずに、店の外へ持ち出す」ことです。冷凍や保存が可能な形にすることで、購入した人が、自分の好きな時間に楽しめるようになります。

一方で、商品化された味が店の味と大きく違えば、かえって店の評価を下げるおそれがあります。そのため、どの商品を、どの形で、どの量で販売するのかは、品質の基準を決めたうえで選ぶ必要があります。

11SALES / MARKETING

どう顧客を獲得する計画だったのか

販売機の設置自体が、最初の接点になります。通りがかった人が、店の存在を知り、商品を試し、気に入れば店にも足を運ぶ、という流れを想定しています。既存のリピーターにとっては、店が閉まっている時間にも購入できる便利さが価値になります。メディアで紹介された実績は、初めて見る人の安心感にもつながります。

12IMPLEMENTATION PLAN

実行に向けて何を準備する計画だったのか

準備として、販売機の導入、冷凍・保存ができる商品の開発、販売機を設置する場所の確保が必要です。設置の場所としては、既存の不動産資産との組み合わせが検討されています。飲食、無人販売、不動産という、三つの経営資源を組み合わせる発想です。

13DECISION AXES

意思決定の背景|なぜ「人が増えない形」を選んだのか

選択肢を比べるときの最初の軸は、利益が残るか」でした。一般的なテイクアウトは、注文の受付、調理、受け渡しという作業が増えます。席数が少なく、来店の対応だけでも負荷が高い店では、その作業を担う人員を新しく増やすことになります。

二つ目の軸は、「品質を守れるか」です。この店の価値は、スープの味と、接客と、居心地です。忙しさが増して一杯ごとの丁寧さが失われれば、価格以上の品質という店の存在理由が揺らぎます。人手を増やす拡大は、品質の低下というリスクを伴いました。

三つ目の軸は、「店舗の外に、店の価値を持ち出せるか」です。冷凍・保存ができる形の商品であれば、店が閉まっている時間にも、店から離れた場所でも、味を届けることができます。販売を機械が担うことで、人員の増加を伴わずに販路を広げられます。この三つの軸を同時に満たす選択肢として、物品併売機による無人販売が選ばれています。

14RISKS & CHECKS

実行前に確認しておきたい点

この構想には、実行前に確認しておきたい点がいくつかあります。

  • 1商品化した味の再現性店で提供する味と、冷凍・保存した商品の味の違いが大きければ、店の評価に影響します。どの商品をどの形で売るかを、品質の基準を決めて選ぶ必要があります。
  • 2販売機の設置場所と客の動線無人販売は、人が通る場所に置かなければ知られません。既存の不動産資産の活用を含め、場所の選び方が販売の成否を左右します。
  • 3店舗への送客の仕掛け販売機の前で買って終わりになれば、店舗の認知にはつながりません。店の情報や来店の動機を、商品の購入時にどう伝えるかを設計する必要があります。
  • 4在庫と補充の運用無人販売では、在庫の管理と補充を誰がどの頻度で行うかが、店の負担を左右します。人員を増やさない設計という狙いに反しない運用が必要です。

15WHAT IT MEANS

この計画が意味していること

この事例は、席を増やすか、回転を上げるか、値上げするか」という発想とは別の、第四の道を示しています。店の価値そのものを商品として切り出し、店の外で、人手をかけずに届ける道です。同時に、その道は、創業者の技術や想いを標準化し、次の世代へ伝える取り組みと、同じ方向を向いています。販路の開拓が、事業承継の準備にもなる点に、この事例の独自性があります。

16SUCCESSION

事業承継という、もう一つの課題

この事例には、販路の開拓とは別に、事業承継という経営課題があります。創業者は、品質に強いこだわりを持ち、長年、多くの作業を自ら担ってきました。身体的な事情を契機に、味や想いを引き継ぐ人材を育てる必要性も強く認識されるようになりました。

味を引き継ぐことは、レシピを渡すだけでは完結しません。素材の選び方、火加減、判断の基準、接客の考え方といった、言葉になっていない部分を、どう残していくかが問われます。販路の開拓によって、店が手を離れた商品を安定して提供する仕組みをつくることは、技術の標準化にもつながります。

創業者の技術を、後継者へ
  1. 1創業者の技術・こだわり
  2. 2標準化・言語化・伝承
  3. 3後継者が味と想いを引き継ぐ

17CONSULTING PERSPECTIVE

この事例から分かる経営上のポイント

以下は、この事例から一般的に考えられる経営上のポイントです。実際に行った支援内容とは区別しています。

  • 1価格競争から離れる経営思想を、事業の設計に反映する「回転率を上げる」以外の道を選ぶなら、販路も同じ考え方で選ぶ必要があります。
  • 2人員を増やさない拡大を考える売上を増やすことと、利益を残すことは別の問題です。
  • 3販路を、広告と送客の機能として設計する売り場は、顧客との新しい接点にもなります。
  • 4販路の開拓と事業承継を同時に考える商品として店の外に出す工夫は、技術を標準化する機会でもあります。

18SUMMARY

この支援で整理した主なポイント

  • 低価格・高回転ではなく、「価格以上の品質」「居心地」「接客」で選ばれる経営思想を整理した。
  • 食品も販売できる物品併売機で、24時間・非対面・無人の販路を設計した。
  • 販売機を、商品の売り場と店舗への送客・認知の入口として位置づけた。
  • 創業者の技術の標準化と伝承を、販路開拓と同じ計画の中に組み込んだ。

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※掲載事例は、過去の支援内容(事業の構想・計画の整理)をもとに、企業・個人が特定されないよう情報を匿名化・再構成しています。

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