支援事例建設業・フィットネス / 事業多角化・強みの転用・稼働率設計

足場工事会社が持っていた「筋力」の専門性を、二毛作型ジム事業へ。

新築・解体・塗装の現場へ足場を提供してきた企業が、建設市況への依存、経営者個人に偏った営業、従業員の高齢化、資材価格の上昇という課題を抱えるなかで、経営者らが持つウエイトリフティングの競技経験・指導経験・人脈に着目し、昼は元気な中高年、夜は競技者という二つの顧客で同じ施設を使う「二毛作型」のジム事業を構想した、支援事例です。

業種
建設業(足場工事)
支援テーマ
事業多角化
区分
経営コンサルティング
建設業(足場工事)のイメージ
イメージ画像です。実際の支援先を撮影したものではありません。

+OUR SUPPORT

この事例での、ProdX Crowdの支援

事業の構想と計画を、経営の判断としてたどれるように整理する支援を行いました。支援の範囲は構想・計画の整理までで、実施や成果を示すものではありません。

  • 課題と真因の整理表面の問題と、その奥の原因を切り分けました。
  • 強みの棚卸しと打ち手の検討すでにある経営資源を、どう使うかを複数の選択肢で比べました。
  • 取り組みの具体化進める順序と、現場で何が変わるのかを、言葉と図で整理しました。
  • 実行の条件の整理法令・安全・体制など、進める前に確かめることを洗い出しました。

01STRENGTHS

会社が持っていた強み

既存事業の強みと、通常の足場会社とは異なる「隠れた経営資源」の二つに分けて整理されています。

  • 1資材を自社保有していること短納期、価格対応、柔軟な施工が可能になります。急ぎの現場や、条件の複雑な現場で選ばれる理由になります。
  • 2新築・解体・塗装など幅広い現場への対応建設の工程ごとに異なる現場と取引があり、多様な業者とのつながりを持っています。
  • 3ウエイトリフティングの競技経験経営者・関係者が、競技者としての実績を持っています。競技の実績は、知名度や、営業での関係づくりにも役立ってきました。
  • 4競技の指導経験とネットワーク選手を育て、指導する経験と、競技団体や関係者とのつながりを持っています。これは、トレーニング事業を始めるうえで、他社がすぐには手に入れられない専門性です。

ここで重要なのは、競技の経歴が「個人の趣味や経歴」にとどまらず、会社の経営資源として捉え直されていることです。専門性が高く、一定の人々から信頼される経験は、適切な市場を見つければ、事業の中心になりえます。

02SYNERGY

既存事業とのシナジー

新事業は、既存事業と離れた別の事業ではありません。二つの方向でつながりを持っています。

一つは、建設業の顧客や取引先です。足場の取引先には、経営者や管理職が多くいます。この人々は、健康や筋力への関心が高い層と重なります。つまり、既存事業で築いた関係が、新しいジムの潜在顧客につながります。

もう一つは、競技のネットワークです。選手の育成や、指導者とのつながりが、事業の専門性そのものを支えます。

03CORE ISSUE

本質的な経営課題

本質的な課題は、「会社の収益の柱が一つしかなく、その柱の状態が外部の市況に左右される」ことです。さらに、その柱を支える営業が経営者個人に依存しているため、経営者の時間と体力が、会社の成長の上限になっています。

したがって、必要なのは、単に新しい事業を始めることではなく、「既存の事業とは異なる動き方をする収益源を、すでに会社が持っている資産の転用でつくる」ことでした。ゼロから別の事業を学ぶのではなく、持っている資産のうち、他の市場で価値を持つものを見つけることが、課題の中心でした。

04STRATEGY

選んだ打ち手と、その理由

新しい事業の方向性として、一般的なフィットネスジムを選ぶこともできました。しかし、その場合、既存の大手や若年層向けのジムとの競争になり、足場会社が持つ資産は活きません。

選ばれたのは、会社が持つ競技の専門性を中心に据えたジム事業です。しかも、顧客を一種類に絞らず、二種類の顧客を同じ施設で受け入れる設計にしています。ここが、この戦略の独自性です。

既存の経営資源から新事業へ
  1. 1足場事業(自社保有の資材・建設の取引先)
  2. 2競技実績・指導経験
  3. 3人脈・ネットワーク
  4. 4健康・筋力の知識
  5. 5新事業|二毛作型のジム

05WHY NOT OTHERS

他の選択肢と比べて、なぜこの形なのか

建設業の会社が新規事業を考えるとき、同じ建設関連の分野に広げる、不動産を活用する、別の業種に出資するなど、さまざまな方向が考えられます。その中で、ジム事業は、一見、足場工事から最も遠い選択肢に見えます。

しかし、事業を支える要素に分解すると、見え方が変わります。専門性は、競技経験と指導経験があります。顧客は、既存の取引先の経営者・管理職という、すでに関係のある層の中に潜在的にいます。そして、足場事業の営業が経営者個人に依存しているという課題に対して、経営者個人の人脈と競技の実績を、新しい事業の信頼の根拠として活かせます。専門性、顧客、信頼の三つがそろう点で、他の分野より、転用の筋が通っています。

06COMPANY / BUSINESS

どのような会社だったのか

この企業は、足場工事を営んでいます。新築の現場、解体の現場、塗装の現場など、さまざまな工事で必要になる足場を、組み立て、提供しています。建設工事において足場は、職人の安全と作業の効率を支える基本の設備であり、工事の初めから終わりまで欠かせません。

特徴の一つは、足場の資材を自社で保有していることです。資材を他社から借りる場合に比べて、短い納期での対応ができ、価格にも柔軟に応じられ、現場の状況に合わせた施工もしやすくなります。顧客にとっては、「急に足場が必要になっても対応してくれる会社」という安心につながります。

一見すると、足場工事と、これから説明する新規事業のあいだには、直接のつながりがないように見えます。事業計画を読み解くうえで重要なのは、この会社の経営資源が、足場工事の設備や施工の技術だけではなかったという点です。

07BACKGROUND

経営環境に何が起きていたのか

建設業の市況は、景気や公共・民間の投資の動向によって変動します。足場は、工事の需要があって初めて必要とされる設備であり、市況が悪くなれば、会社全体の売上に直接の影響が及びます。

加えて、資材の価格が上昇していることも、経営を圧迫する要因です。自社で資材を保有する強みがある一方、資材の調達や更新の費用は、価格が上がればその分の負担になります。

08VISIBLE PROBLEM

当初見えていた問題

経営者が認識していた課題は、足場事業への依存でした。建設市況が悪化すれば、会社全体の売上が影響を受けます。さらに、営業が経営者個人に依存していること、既存の取引先への依存、従業員の高齢化、資材価格の上昇といった課題も重なっていました。

一つひとつは、建設業の多くの会社が抱える悩みです。しかし、これらを一つずつ解決しようとしても、「足場事業に頼る構造」そのものは変わりません。

09IDEA

新規事業発想の起点

発想の起点は、50代以上の経営者や管理職との日常の会話でした。そうした人々は、「筋力」「若さ」「健康」「トレーニング」への関心が高いという共通点がありました。仕事を長く続け、これからも元気に働きたいという意識が、健康への関心になって表れていました。

ここから、一つの顧客層が見えてきました。高齢者向けのリハビリを必要とする人々ではなく、若年層向けの本格的なジムの利用者でもない、「元気な中高年」です。ある程度の運動強度を求め、専門的な指導を受けながら継続して利用できる場を探している層でした。

10KEY QUESTIONS

事業計画を考える上で整理した論点

発想を事業計画に落とすために、次のような論点が整理されました。

  • 1誰を顧客にするのか高齢者向けのリハビリ、若年層向けのフィットネスと、どこが異なるのか。元気な中高年という層は、実際に存在するのか。
  • 2何を解決するのか一定の運動強度を求める中高年が、専門的な指導を受けながら続けられる場が少ないという仮説を、どう検証するか。
  • 3既存の何を転用できるか競技経験、指導経験、競技のネットワーク、建設業の顧客とのつながり。
  • 4新たに何が必要か施設、トレーニングの設備、運営の人員、集客の方法。
  • 5どこで他と差別化するか競技レベルの専門性を持つ指導者がいること。
  • 6初期投資と固定費をどう抑えるか設備を使う時間帯を増やすことで、一人あたりの負担を下げられるか。
  • 7既存事業とどうシナジーを生むか建設の顧客である経営者・管理職を、新しい事業の顧客としてどう迎えるか。

11MARKET / CUSTOMER

どの顧客・市場を狙ったのか

既存の市場には、高齢者のリハビリ、若年層のフィットネス、パーソナルジムなどがあります。しかし、運動の強度をある程度求めるアクティブな中高年が、専門的な指導を受けながら、継続して利用できる場は少ないのではないか、というのが事業の仮説です。

顧客の像は、健康や体力の維持に前向きで、まだ元気に働いている、あるいは現役を意識している人です。購買の理由は、見た目や若さへの関心、仕事を長く続けるための体力、同世代の仲間と過ごす時間などが考えられます。ただし、これらは計画段階の仮説であり、実際の需要は、事業を始めて確認する必要があります。

二つ目の顧客層は、ウエイトリフティングを本格的に取り組む競技者です。専門の指導者がいて、競技に適した設備がある場は多くありません。競技者にとっては、環境そのものが施設を選ぶ理由になります。

12SALES / MARKETING

どう顧客を獲得する計画だったのか

集客の方法は、既存の人脈、競技団体、Web、メディア、法人の健康経営、福祉事業者、出張のセミナーなど、複数の経路が想定されています。

  • 1既存の人脈建設の取引先、経営者仲間、経営者個人の知人。最初の顧客になりやすい層です。
  • 2競技団体・競技者のネットワーク競技者の利用を呼び込む経路です。
  • 3法人の健康経営企業が従業員の健康づくりに取り組む動きを、法人契約の機会として捉えます。
  • 4福祉事業者・出張セミナー施設に来る前の入り口として、健康への関心を持つ人と接点をつくります。
  • 5Web・メディア競技実績を活かした認知づくりです。

13REVENUE STRUCTURE

事業の仕組みをどう考えたのか

収益は、施設の利用料が中心になります。重要なのは、設備の稼働率です。

具体的な利用料の水準、会員数、初期投資の額、計画策定時点の想定であり、本ページでは掲載していません。

14IMPLEMENTATION PLAN

実行に向けて何を準備する計画だったのか

準備の中心は、施設とトレーニング設備の確保、指導の体制、顧客に知ってもらうための集客の準備です。既存の人脈を使って最初の利用者を迎え、その後、競技団体や法人、福祉分野へと広げていく順番が想定されています。

既存の足場事業は継続します。新事業を始めるにあたって、経営者の時間が足りなくなれば、既存事業の営業が手薄になるおそれがあります。経営者個人に依存している営業の構造を見直すことも、新事業の準備と並行して進める課題です。

15HOW THE IDEA FORMED

発想はどのように形になったのか

この事例で注目したいのは、新規事業が「市場の調査」から始まったのではないという点です。出発点は、経営者が日常的に交わしていた会話でした。同じ年代の経営者や管理職が、体力の維持や筋力、トレーニングに高い関心を持っていることに気づく。それが最初の観察です。

次に、その関心に応える場が、市場の中にどれだけあるかを見渡します。高齢者向けのリハビリは、回復や介護予防が目的で、運動強度は控えめです。若年層向けのジムは、見た目の変化や競技的な目標を求める人が中心で、雰囲気も年齢層も異なります。パーソナルジムは個別の指導を受けられますが、費用の面でも、継続して通う場としても、誰もが気軽に選べるわけではありません。

その間に、「ある程度の運動強度を求めたいが、専門的な指導がなければ不安で、同世代の仲間と続けたい」という層がいるのではないか。これが仮説です。そして、この層に対して、専門的な指導ができる人が、すでに自社の経営者と関係者の中にいました。ウエイトリフティングの競技経験と指導経験です。顧客の仮説と、自社の専門性が、同じ場所で重なったことが、事業の発想が形になった瞬間です。

16RISKS & CHECKS

実行前に確認しておきたい点

この構想は、仮説の上に成り立っています。事業を始める前に、また始めた後に、確認し続けるべき点があります。

  • 1元気な中高年の需要の実在「ある程度の強度の運動を、専門的な指導で続けたい中高年」が、実際にどのくらいいるかは、計画段階では仮説です。最初の利用者の反応を確認しながら、サービスの内容を調整する前提が必要です。
  • 2安全面の配慮ウエイトリフティングのような負荷の高い運動を中高年が行う場合、体調の確認や段階的な負荷の設定など、安全に関する運用が不可欠です。健康への効果を断定する表現は避けるべきです。
  • 3昼と夜の利用が本当に重ならないか二毛作の前提は、利用の時間帯が重ならないことです。実際の利用の様子を見て、時間帯ごとの運用を見直す必要があります。
  • 4経営者の時間の配分足場事業の営業を担う経営者が、新しい事業にも時間を使えば、既存事業が手薄になるおそれがあります。役割の分担を、事業の開始前に整理しておくことが重要です。
  • 5競技者の集客競技者を呼ぶには、専門的な設備と環境が必要です。必要な設備の種類と、投資の規模を、競技の関係者と相談して決めることが求められます。

17WHAT IT MEANS

この計画が意味していること

この事例は、足場会社が、ジムという別の事業を始めるという話にとどまりません。「会社の経営資源は、設備や技術だけでなく、経営者が人生で積み上げてきた専門性や人間関係にも存在する」という見方を示しています。

同時に、施設を昼と夜で異なる顧客に使ってもらうという設計は、固定費の重い事業を、小さな規模で成立させるための工夫でもあります。既存事業との関係を断たず、同じ関係の中から顧客を迎え、専門性を土台に差別化する。新規事業の進め方として、再現性のある型が含まれています。

18CONSULTING PERSPECTIVE

この事例から分かる経営上のポイント

以下は、この事例から一般的に考えられる経営上のポイントです。実際に行った支援内容とは区別しています。

  • 1経営者個人の経歴も、経営資源として棚卸しする本業とは関係なく見える経験が、別の市場で価値を持つことがあります。
  • 2日常の会話から、顧客の関心を拾う新規事業のヒントは、すでにある関係の中にあることが少なくありません。
  • 3顧客層の「空白」を探す既存の市場の間に、まだ満たされていない層がないかを確認します。
  • 4新事業と既存事業の接点を設計する既存の顧客が、新事業の顧客になる導線を、最初から考えておくことが重要です。

19SUMMARY

この支援で整理した主なポイント

  • 足場の資材を自社保有し、短納期・価格対応・柔軟な施工を実現してきた強みを整理した。
  • 経営者らのウエイトリフティングの競技・指導経験と人脈を、「隠れた経営資源」として発見した。
  • 高齢者向けリハビリでも、若年層向けの本格ジムでもない「元気な中高年」という顧客層に着目した。
  • 昼は中高年、夜は競技者という、利用時間帯の重なりにくさを活かした二毛作型の稼働率設計を置いた。
  • 建設の顧客である経営者・管理職を、新事業の潜在顧客として位置づけた。
  • 足場事業を続けながら、市況に左右されにくい収益の柱をつくる計画にした。

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※掲載事例は、過去の支援内容(事業の構想・計画の整理)をもとに、企業・個人が特定されないよう情報を匿名化・再構成しています。

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飲食で培った接客・人材教育・地域の関係を活かし、介護施設等へ訪問して調剤・服薬管理・オンライン研修・緊急時対応を行うサービスを構想した。薬剤師が専門業務に集中できる役割分担と、訪問の体制もあわせて設計した。
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価格ではなく服薬管理・教育・オンライン対応・緊急時対応で選ばれる、地域に寄り添う訪問型のサービスを目指す。制度で価格が決まる分野で、中身で選ばれる設計を目指す。

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