中小企業BCP(事業継続計画)の普及促進
中小企業BCP(事業継続計画)の普及促進(中小企業基盤整備機構(J-Net21 中小企業支援施策))の対象者、金額、対象経費、日程、注意点を、この制度の内容にそって整理しました。
このページは補助金ではなく、BCP(事業継続計画)の考え方と、簡易版の認定制度を案内する解説です
「中小企業BCP(事業継続計画)の普及促進」は、中小機構のJ-Net21が「補助金・助成金だけじゃない!中小企業支援施策」の一項目として載せている解説ページです。2022年1月に内容が改訂されています。お金が交付される制度ではありません。大地震などの緊急事態が起きたときに事業を止めない、または早く再開するための計画を、あらかじめ作っておこうという呼びかけと、その進め方の説明です。
位置づけを先に表で整理します。
| 見方 | この制度の場合 |
|---|---|
| 種類 | 補助金ではない。計画づくりの考え方の普及と、「事業継続力強化計画」という認定制度の紹介 |
| 掲載元 | 中小企業基盤整備機構(J-Net21)の中小企業支援施策ページ |
| 対象 | BCPを作りたい中小企業。業種・規模の限定はページ上で示されていない |
| 金額・補助率 | 交付される金額はない。J-Net21のページに金額の記載もない |
| 締切 | 公募期間はない。いつでも取り組める |
| 関連する認定 | 事業継続力強化計画(令和元年7月に施行された認定制度) |
| 公的な指針 | 中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」、内閣府「事業継続ガイドライン」(令和5年3月改定) |
ProdX Crowd編集部は、補助金の申請支援を日々行うなかで、「採択されたあとに設備が災害で止まったらどうするのか」という質問を、審査側からも経営者側からも受けます。この記事では、J-Net21の解説をもとに、内閣府の事業継続ガイドラインと東京商工会議所のガイドの内容を併せて読み、BCPとは何か、何から手をつけるか、認定制度は何のためにあるのかを整理します。融資・保険商品の詳しい説明、相談窓口やセミナーの案内は、このサイトの対象外のため扱いません。
BCPとは何か。防災マニュアルと何が違うのか
BCPは Business Continuity Plan の略です。J-Net21は、自然災害などの緊急事態に遭ったとき、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、早期に復旧して中核となる事業を続けていくために、企業が事前に具体的な対策を計画しておくことと説明しています。
内閣府の事業継続ガイドラインは、もう一歩踏み込んで、BCPと「BCM(事業継続マネジメント)」を分けて考えています。BCPは、被災後に重要業務を目標の時間とレベルまで戻すための対応計画です。BCMは、BCPを作り、予算と人を確保し、事前対策や訓練を行い、点検して改善し続ける、平常時からの経営活動の全体を指します。ガイドラインは、計画書を作って終わりにせず、継続的な取組として回すことを重視しています。
防災活動との違いも、ガイドラインの比較表がわかりやすいため、要点を並べます。
| 比べる点 | 従来の防災活動 | 事業継続マネジメント(BCM) |
|---|---|---|
| 主な目的 | 身体・生命の安全確保と物的被害の軽減 | 安全確保に加えて、優先的に続けるか早く戻すべき重要業務の継続・復旧 |
| 考える事象 | 拠点のある地域で起こりうる災害 | 事業の中断につながりうるあらゆる事象 |
| 検討の範囲 | 拠点ごと(本社ビル、工場など) | 全社横断。調達先・委託先・供給先なども含む |
| 取り組む人 | 防災・総務・施設などの特定部門 | 経営者を中心に、各事業部門と管理部門が横断的に |
| 主な対策 | 耐震補強、備蓄、救助、復旧工事 | 代替拠点、二重化、OEM、データのバックアップなどの代替戦略と、現地復旧の双方 |
ガイドラインは、防災活動を単に延長したものがBCMではない、と述べています。経営資源が限られる非常時には、すべての業務を戻せません。どの業務を、いつまでに、どの水準まで戻すかを経営判断として決めるところが、防災との大きな違いです。ただしガイドラインは、防災活動もBCMも並行して進めるべきだとしています。
J-Net21が示す、BCPを作る5つの段階
J-Net21は、中小企業庁が設けたBCPの策定手順として、5つの段階を紹介しています。段階ごとに、何を決めるのかを表にしました。
| 段階 | 決めること | J-Net21の説明のポイント |
|---|---|---|
| 基本方針の立案 | 何のために作るのか。どんな緊急事態を考えるのか | 目的の例として、従業員の命や安全を守る、顧客からの信用を失わない、経営難でも従業員を解雇しない、地域経済に貢献する、が挙げられている |
| 重要商品の検討 | 緊急時に優先して作る・売る商品やサービス | 「A社向けのX商品、B社向けのY商品」のように優先順位を決めておくとよい、という例が示されている |
| 被害状況の確認 | 緊急事態で、自社に何が起こるか | インフラ(停電、通信、道路、電車)と自社への影響(建物、設備、人、売上、復旧費用)に分けて想像する |
| 事前対策の実施 | 被害を減らし、早く戻すために平時にやっておくこと | 対応マニュアル、避難訓練、備蓄、安否確認の仕組み、耐震補強、代替の生産・仕入れ先 |
| 緊急時の体制の整備 | 誰が指揮し、誰が代わりを務めるか | 統括責任者と代理責任者、時期ごとの対応項目、連絡網の共有 |
5つの段階は、順番に作業していくと自然に計画の骨格ができるように並んでいます。特に2番目の「重要商品の検討」が肝心です。すべてを守ろうとすると、何も具体的に決まりません。J-Net21の例のように、取引先と商品を具体的に挙げて順位をつけると、必要な人、設備、材料が見えてきます。
段階ごとに考える、小さな会社の具体例(仮の数字)
数字の感覚をつかむための例です。金額や日数はすべて仮の数字で、実在の会社や制度の値ではありません。
| 項目 | 仮の設定 |
|---|---|
| 会社 | 従業員12人の金属部品加工業。主力は取引先A社向けの部品X |
| 部品Xの1日あたり売上 | 80万円(仮) |
| A社が許容できる納品の遅れ | 3日程度(仮。取引先との会話から把握した想定) |
| 現状の復旧見込み | 加工機が止まった場合、代替機の手配に5日(仮) |
| 差 | 2日。この差を縮める対策が事前対策の中心になる |
この例では、1日80万円の売上が止まり続けるうえ、A社が許容する遅れを2日超えます。縮める手立てとして、同業他社と応援協定を結ぶ、予備の加工機を借りる先を決めておく、図面と加工条件のデータを別の場所に保管する、といった対策が候補になります。どれを選ぶかは費用との兼ね合いです。ここで大切なのは、金額の大きさではなく、「何日で戻したいのか」という目標を先に置くことです。
「被害状況の確認」で何を洗い出すのか
J-Net21は、被害の想像を、インフラと自社への影響の2つに分けて示しています。経営者が自社の状況に引き寄せて考えやすいよう、確認の観点を表にします。
| 区分 | J-Net21が挙げる内容 | 自社で確かめたいこと |
|---|---|---|
| インフラ | 停電でガス・水道が止まる | 停電が3日続いたとき、止まる業務はどれか |
| インフラ | 電話・インターネットがつながりにくくなる | 連絡手段が1つに偏っていないか |
| インフラ | 交通規制や渋滞が起きる | 納品と仕入れのルートが1本だけではないか |
| インフラ | 電車が止まる | 出社できない従業員が何人いるか |
| 自社 | 事務所・工場・店舗の倒壊や浸水 | ハザードマップで自社の場所はどう示されているか |
| 自社 | 機械、什器、商品、パソコンの移動・倒壊 | 固定していない設備、床置きの重要書類はないか |
| 自社 | 従業員の負傷、出社不能 | 一人しかできない業務はどれか |
| 自社 | 停電で製造・販売・パソコン作業ができない | 手作業で代替できる工程はあるか |
| 自社 | 製造・販売が止まる間の売上減と人件費の負担 | 売上が止まっても払い続ける支出は何か |
| 自社 | 建物や機械の復旧費用 | 復旧にかかる費用の備えはあるか |
内閣府のガイドラインは、被害の想定について、自治体や政府が公表している被害想定やハザードマップを活用するよう勧めています。同時に、想定を超える事象が起こりうることも認識しておくべきだと述べており、東日本大震災の教訓にも触れています。想定にこだわりすぎず、「結果として何が使えなくなるか」で考える方法も示されています。たとえば「直下型地震が起きる」と考えるのではなく、「自社の拠点が使えない」「人が出社できない」「調達先から部品が届かない」と、結果の側から考えます。原因が違っても、同じ結果なら同じ対策が効くからです。
事前対策には何があるのか。J-Net21の例と、内閣府の整理
J-Net21が事前対策として挙げているのは、次のようなものです。緊急時の行動手順と連絡方法を書いたマニュアルを作成・更新する、社内で避難訓練を行う、備蓄品の種類・数量・消費期限を確認して補充する、安否確認メールなどのシステムを入れて従業員にテスト訓練を行う、建物・機械設備・什器に耐震補強をしておく。さらに、被害が大きく復旧が難しい場合に備えて、通常と違う工場や設備で生産する、通常と違う仕入れ先から調達する、といった代替案を用意することも勧めています。
内閣府のガイドラインは、これを戦略の観点から整理しています。重要な事業に不可欠な要素、とくにボトルネックをどう確保するかという視点で、拠点、調達・供給、要員、中枢機能、情報、資金、法規制などに分けて対策を示しています。
| 観点 | ガイドラインが挙げる対策の例 | 中小企業が取り組みやすい形 |
|---|---|---|
| 業務拠点 | 建物・設備の被害の抑止、拠点の多重化・分散化、他社との提携(OEM、相互支援協定)、在宅勤務 | 転倒防止、設置階の見直し、取引先や同業との応援協定、テレワーク環境の確認 |
| 調達・供給 | 在庫の見直しと分散、調達先の複数化、汎用部品の使用 | 主要部品の仕入れ先を2社にする、設計で代替部品を認める |
| 要員 | 代替要員の事前育成(クロストレーニング)、受援体制 | 一人しかできない作業の見える化と、相互に教え合う仕組み |
| 中枢機能 | 代替の対策拠点、指揮命令系統と代理体制、情報発信の体制 | 経営者不在時の代行順位、連絡先一覧、複数の連絡手段 |
| 情報・システム | 重要な情報のバックアップを、同時に被災しない場所へ。システムの二重化 | クラウドや遠隔地へのデータ保管、紙の重要書類の写し |
| 資金 | 手元資金の確保。保険や共済などの事前の備え | 固定費の把握、保険の補償範囲の確認 |
| 法規制 | 被災時の規制緩和の検討、期限のある届出への対応 | 税務申告や契約上の期限がある業務の洗い出し |
ガイドラインは、費用についても現実的に書いています。多額の出費を伴わなくても一定の対応は可能であり、資金や人に余裕がない企業も含め、すべての企業に導入が望まれる。初めから完璧を目指さず、できることから始めて、継続的な改善で徐々に能力を高めることを強く勧める、という考え方です。代替拠点を持つのが難しければ、場所だけを決めておいて立ち上げ訓練を行う方法や、同業他社と相互支援を合意する方法もあると例示しています。
「重要業務」と「目標復旧時間」をどう決めるのか
BCPで最も考えにくく、最も効果が大きいのが、ここです。内閣府のガイドラインは、事業影響度分析(BIA)という手順を示しています。
まず、自社の各事業が止まった場合の影響を、時間の経過に沿って評価します。評価の観点は、利益・売上・シェアへの影響、資金繰りへの影響、顧客への影響と取引継続への影響、従業員の雇用への影響、法令や契約に違反した場合の影響、社会的な信用への影響、社会・地域への影響です。分析は原因を問わずに行います。顧客や取引先の判断では、「止まるかどうか」が重要で、止まった原因は大きな問題にならないことが多いからです。
次に、影響の評価から、優先して続ける・戻す重要業務を絞り、それぞれに目標復旧時間(RTO)と目標復旧レベル(RLO)を置きます。ガイドラインは、停止してよいと考える時間の許容限界より早く目標復旧時間を決め、レベルの許容限界を上回る水準に復旧レベルを置く、と説明しています。ただし、この段階の目標はあくまで案です。対策の実施可能性を確かめたうえで、経営判断として正式に決めます。対外的に説明する目標は、一種の約束になるからです。
| 用語 | ガイドラインの説明 | 小さな会社での置き換え |
|---|---|---|
| 事業影響度分析 | 止まったとき、何がどれだけ困るかを時系列で評価する | 1日あたりの売上や事務処理量で簡易に評価してもよい(ガイドラインも簡易な評価を認めている) |
| 重要業務 | 優先して継続・早期復旧すべき業務 | 売上と信用への影響が最も大きい商品・サービスの業務 |
| 目標復旧時間 | どれくらいの時間で戻すか | 取引先の許容する遅れより短く |
| 目標復旧レベル | どの水準まで戻すか | 最初は7割の出荷でよい、など段階的に |
| ボトルネック | 必要量の確保が早まらない限り、復旧を早められない要素 | 代替のきかない機械、一人しかいない担当者、単一の仕入れ先 |
| 目標復旧時点 | データをどの時点まで戻すか | 1日前のデータまで戻せれば足りるのか、直近まで必要か |
ボトルネックの考え方は、小さな会社ほど役に立ちます。ガイドラインは、ボトルネックに対策を打つと次のボトルネックが現れるため、ある程度先を読んでおくよう勧めています。たとえば代替機を確保しても、その機械を動かせる人が一人しかいなければ、次の制約は人になります。
緊急時の体制と手順。何を、誰が、いつ
5番目の段階「緊急時の体制の整備」について、J-Net21は、重要な意思決定と指揮命令を行う統括責任者を決め、不在の場合の代理責任者も決めること、時期に応じた対応項目を出しておくこと、連絡網を作って共有することを求めています。
内閣府のガイドラインはこれを具体化し、初動段階で実施する事項を例示しています。表にまとめます。
| 時期 | 実施主体 | 主な事項 |
|---|---|---|
| 初動 | 対策本部 | 参集基準に基づく立ち上げ、建物・設備・従業員の被害確認、安否確認と集約 |
| 初動 | 対策本部 | 顧客・従業員の避難誘導と物資の配給、火災や薬液漏れなど二次災害の防止 |
| 初動 | 対策本部 | 連絡手段の確保と、社内外への状況の情報発信(連絡先一覧を使う) |
| 初動 | 各従業員 | 自身と周囲の安全の確保、自身と家族の安否の報告 |
| 初動の後 | 対策本部 | BCP発動の要否を、あらかじめ決めた基準で判断する |
| 事業継続対応 | 対策本部・事業継続組織 | 取引先・当局からの要請の確認、現拠点と代替拠点の能力の確認、復旧時間の見積もり |
| 事業継続対応 | 対策本部・事業継続組織 | 現地復旧・代替拠点・提携先活用などの戦略の決定、臨時予算の確保 |
| 事業継続対応 | 対策本部・事業継続組織 | 取引先や地域への発信、平常時の体制への復帰、対応の記録 |
とくに、対応の記録を残すことが、あとの見直しに効きます。ガイドラインは、発生事象が落ち着いたあとで振り返れるよう、記録する項目をあらかじめ決めた書式を用意しておくことを勧めています。また、台風のように事前に被害が予想できる事象については、気象警報や公共交通機関の計画運休を踏まえ、被害が出る前の行動(計画休業、テレワーク、外出抑制など)の基準も手順表に書くとよい、と述べています。
実務上の注意として、ガイドラインは、緊急時にマニュアルを一から読み解く時間はない、と書いています。指揮をとる責任者向けに、方針と不可欠な項目の進捗を確認するチェックリストを、各担当者向けには緊急に行う作業のチェックリストを用意するとよい、という指摘です。計画の重要性は文書の緻密さではなく、対応する人の行動を支えることにあり、文書にすること自体が目的になってはいけない、とも書かれています。
「定着と見直し」を怠るとどうなるか
J-Net21は、せっかく作ったBCPが、実際の大震災で役に立たなかったということでは、時間と労力が無駄になる、と書いています。そのため、定着と見直しを定期的に行うことを求めています。
| 活動 | J-Net21が挙げる内容 | ガイドラインの補足 |
|---|---|---|
| 定着 | 経営者が年1回以上、従業員にBCPの進捗と問題点を確認する | 教育と訓練を継続して行う。紙や社内ページで周知するだけでは足りない |
| 定着 | 従業員が自分の取組状況と役割分担を確認する | 人事異動や新規採用のたびに、新しい担当者へ教育する |
| 定着 | 研修会の開催、内容の社内掲示 | 机上訓練、反復訓練、模擬演習、総合演習など、目的に応じて使い分ける |
| 見直し | 取引状況・財務状況・人事異動で重要商品や事前対策が変わるなら更新する | 担当者による点検と、経営者による見直しを、それぞれ年1回以上行う |
| 見直し | 新たな問題点が見つかったら、事前対策を整えてBCPを更新する | BCPを発動した場合は、その反省を見直しに反映する |
ガイドラインは、訓練の方法を細かく分類しています。クロストレーニング(担当を入れ替えて互いの業務を覚える)、ウォークスルー(机上で手順と役割を確認する)、反復訓練(避難、バックアップの稼働などを繰り返す)、模擬演習やシミュレーション、ロールプレイング、そして机上と実働を組み合わせた総合演習です。中小企業なら、まず年1回、30分の机上訓練として「今日、工場が使えなくなった。最初の1時間で誰が何をするか」を話し合うところから始められます。この30分は、ガイドラインの言う「手順化できない事項について、適切な判断ができる能力を鍛える」訓練の入口になります。
事業継続力強化計画とは何か。BCPの簡易版としての認定制度
J-Net21は、BCPの簡易版として、「事業継続力強化計画」の認定制度が令和元年7月に施行されたと説明しています。BCPの作成に多くの時間と労力がかかるのに対し、この計画は簡易に作れる、と書かれています。この制度の認定を受けた中小企業は、税制優遇や金融支援、補助金の加点などの支援策を受けられる、とも述べられています。
J-Net21が挙げる、計画の記載項目は次のとおりです。
| 記載項目 | 内容 |
|---|---|
| 自然災害リスクの確認 | ハザードマップなどを活用して、自社が受ける可能性のある被害を確認する方法 |
| 初動対応の手順 | 安否確認や避難の実施方法など、発災時の最初の動き |
| 具体的な事前対策 | 人員の確保、建物・設備の保護、資金繰り対策、情報の保護 |
| 実効性の確保 | 訓練の実施、計画の見直しなど、取組を続けるための方法 |
通常のBCPとの違いを、J-Net21の説明をもとに並べると次のようになります。
| 比べる点 | 中小企業BCP策定運用指針にもとづくBCP | 事業継続力強化計画 |
|---|---|---|
| 位置づけ | 自社で策定し、運用する計画 | 国の認定制度にもとづく計画。BCPの簡易版 |
| 作成の負担 | 多くの時間と労力を要する | 簡易に作成できる |
| 外部からの評価 | 取引先などへの説明に使える | 認定を受けると、税制優遇・金融支援・補助金の加点などの支援策を受けられる(J-Net21の説明) |
| 参考資料 | 中小企業庁のウェブサイトで様式をダウンロードできる | 計画概要、作成指針、基本方針などがウェブサイトで閲覧できる |
J-Net21のページは、補助金の加点の実例として、令和元年度補正・令和二年度補正のものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金で、申請時に事業継続力強化計画の認定を取得していることが加点の対象になっていた、と紹介しています。これは過去の公募回の話です。いま申請を考えている補助金で加点があるかどうかは、必ずその回の公募要領で確かめてください。この記事は、そうした加点の有無を、他の制度について述べるものではありません。
税制優遇や金融支援の具体的な内容は、J-Net21のページには書かれていません。取得できない項目なので、ここでは書かず、確認先を示します。計画の認定要件・申請書式・申請先は、中小企業庁の「事業継続力強化計画」のページが一次資料になります。J-Net21のページに掲載されている中小企業庁のウェブサイトへのリンクから確認してください。税制の詳細は、顧問税理士または所轄の税務署に確認する先があります。中小企業庁のページは、編集部の環境では閲覧できませんでした(アクセスが制限されているため)。申請に着手する前に、必ずご自身のブラウザで最新の内容を確認してください。
中小企業BCP策定運用指針の「4つのコース」はどう選ぶか
J-Net21によると、中小企業庁が定める「中小企業BCP策定運用指針」は、経営者が従業員と一緒に自社のBCPを策定し、日常的に運用し、緊急時に備えてBCP発動の予習を行うための指針です。投入できる時間と労力に応じて、入門コース、基本コース、中級コース、上級コースの4つが用意されています。最初に、指針のウェブサイトで「入門診断」を行い、コースを選び、各種様式をダウンロードして作成する流れです。
| コース | 想定される会社の状況(編集部の整理) | 向き合い方の目安 |
|---|---|---|
| 入門 | 初めて取り組む、従業員が少ない、まず形を作りたい | 最低限の項目を押さえる。ここで終わりにせず、次の見直しで基本へ進む前提で |
| 基本 | 主要な取引先があり、止まると影響が大きい | 重要業務と事前対策を具体的に書く。経営者と主要メンバーで作る |
| 中級 | 複数の事業や拠点がある | 事業ごとの影響度と復旧目標を整理する |
| 上級 | 取引先から継続的な説明を求められる | 分析と訓練まで含めた、運用を前提とした計画 |
上の表の右2列は、J-Net21の4コースの名称を踏まえた編集部の目安であり、指針そのものの記述ではありません。実際の各コースの項目や分量は、中小企業庁の指針のウェブサイトで確認してください。
同じ考え方は、民間の団体も取り入れています。東京商工会議所は2024年3月14日、「中小企業向けオールハザード型BCP策定ガイド」(全69ページ)を発行したと発表しています。考えうるすべてのハザードを想定し、影響する経営資源を分析して、経営資源ごとに復旧戦略を検討するのがオールハザード型BCPです。最低限の「入門版」、簡易な「基本版」、自社の事業環境を本格的に分析する「上級版」の3つの策定モデルが用意されています。様式集は東京商工会議所の会員限定で、ガイド本編はデジタルブックとして公開されている、とリリースに書かれています。
申請書はない。それでも「始め方」と日程は決められる
この制度には公募期間も申請書もありません。ただ、取り組む順序と所要時間は、ある程度見通せます。以下は、内閣府ガイドラインの全体プロセスとJ-Net21の5段階を踏まえた、編集部の進め方の一例です。期間は、従業員10人前後の会社を想定した仮の目安であり、公式資料に書かれた標準期間ではありません。
| 時期(仮の目安) | やること | 成果物 |
|---|---|---|
| 1週目 | 経営者が基本方針を書く。責任者を決める | 目的を書いた1枚の方針 |
| 2〜3週目 | 重要商品を絞る。止まった場合の影響と、取引先が許容する遅れを整理する | 重要業務と目標復旧時間の案 |
| 4〜5週目 | ハザードマップと被害想定を見て、被害の状況を洗い出す。ボトルネックを探す | 被害想定の一覧表、ボトルネックの一覧 |
| 6〜8週目 | 事前対策を選び、費用と担当と期限を決める | 事前対策の実施計画 |
| 9〜10週目 | 緊急時の体制、連絡網、初動の手順を作る | 連絡先一覧、初動のチェックリスト |
| 11週目以降 | 机上訓練を行い、弱点を直す。年1回の見直し日を決める | 訓練の記録、改訂版 |
ガイドラインは、事業影響度分析に時間をかけすぎると、その間に事業環境が変わって作業が無意味になりうると注意しています。直感的に重要業務や目標復旧時間がつかめるなら、簡易な取組ではそれを用いてよいという立場です。完璧な分析を待たず、早く一周して、2周目で精度を上げるのが現実的です。
つまずきやすい点。作っただけで終わる、が最も多い
ガイドラインは、BCMで特に重要な3点として、不測の事態に事業を継続する仕組み、社内にBCPとBCMの意識が浸透していること、仕組みと能力を評価して改善する仕組み、を挙げています。そのうえで、これらが不十分だと、他を充実させても効果が限られる可能性が高いと述べています。つまずきの典型を、資料の記述に沿って表にします。
| つまずき | 起こること | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 計画書を作ることが目的になる | 分厚い文書が棚に残り、緊急時に誰も読めない | 緊急時に使う部分をチェックリストにして配る(ガイドライン) |
| 経営者が関わらない | 担当者だけでは効果が得られない(ガイドライン) | 経営者が責任者になり、見直しの日程を自分の予定に入れる |
| すべてを守ろうとする | 優先順位が決まらず、対策が広がって進まない | 重要商品を3つ以内に絞る(J-Net21の例は3商品) |
| 想定を1つの災害に固定する | 想定と違う事態で動けない | 「結果事象」で考え、地震以外にも使える対策を選ぶ |
| 担当者が交代して忘れられる | 内容が引き継がれず、陳腐化する | 体制を解散せず、兼務でも運用担当を残す(ガイドライン) |
| 訓練をしない | 手順が実際に動くか分からない | 年1回は机上訓練。人事異動や採用のたびに教育する |
| データの保管場所が同じ | 同じ災害で原本もバックアップも失う | 同時に被災しない場所へ保存する(ガイドライン) |
| 取引先を見ていない | 自社は動けても、調達先が止まって動けない | 重要部品の調達先の事業継続の状況を把握し、複数化を検討する |
この取組が向く会社、向かない会社
BCPは、どの会社にも関係しますが、取り組む優先度や進め方には差があります。
| 状況 | 向く度合い | 理由と進め方 |
|---|---|---|
| 特定の取引先向けの納品に売上が偏っている | 強く向く | 納期遅れが信用に直結する。重要商品の特定と目標復旧時間が最も効く |
| 製造設備や専用システムに依存している | 強く向く | 代替が難しいボトルネックになりやすい。代替の仕入れ先や提携先を先に探す |
| 補助金で設備や仕組みを入れる予定がある | 向く | 導入後に使えなくなる事態に備える視点が、事業計画の説得力を補う |
| 取引先から事業継続の取組を尋ねられた | 向く | 認定制度や策定指針の様式があると、説明の材料になる |
| 従業員が数人で、経営者が現場に出ずっぱり | 簡易版から | まず事業継続力強化計画の趣旨に沿った簡易な形から。入門コースの診断から始める |
| 事業がほぼ終わりに近く、継続の意思が薄い | 向かない | BCPは事業を続ける意志を前提にした計画 |
| 認定を取ること自体が目的になっている | 向かない | 計画が実際に動くかが重要。認定は結果として付いてくる |
類似する取組との違い
名前が似た取組と取り違えやすいため、関係を整理します。
| 取組 | 性格 | BCPとの関係 |
|---|---|---|
| 防災マニュアル・避難訓練 | 拠点の安全確保と被害軽減 | BCMと並行して進める。内容が重なる部分(現地復旧)がある |
| 事業継続力強化計画 | 国の認定制度。BCPの簡易版 | まず簡易版で形を作り、のちに通常のBCPへ広げる道筋が描ける |
| 中小企業BCP策定運用指針 | 中小企業庁が示す、策定と運用の手引き | 4つのコースから自社に合うものを選んで作る |
| 内閣府の事業継続ガイドライン | 全企業・組織を対象にした、BCMの基本的な考え方 | 中小企業でも、考え方の背骨として使える |
| 国際規格(ISO22301など) | 事業継続マネジメントの国際規格 | ガイドラインは国際規格と考え方を合わせているが、認証の取得を勧めるものではない(ガイドライン) |
| 保険・共済 | 損害の補てんに使う手段 | 事前対策のうち資金面の一つ。計画の代わりにはならない |
内閣府のガイドラインは、国際規格について、本ガイドラインに沿って取り組めば国際的な整合性の確保に役立つとしながら、認証取得の条件をすべて満たす趣旨ではないと明記しています。認証や認定の取得を目指す場合は、その制度の要求事項を直接確かめるよう求めています。
補助金や取引との関係。ProdX Crowd編集部の実務の見方
補助金と、BCPの取組は、2つの意味でつながります。1つは、先に述べたとおり、公募回によっては認定が加点の対象になることです。もう1つは、事業計画の審査での読まれ方です。設備投資や情報システムの導入を計画に書くとき、その設備が止まったらどうするかが、事業の継続性として問われることがあります。補助金で入れた設備は、一定の期間、使い続けることが前提になるためです。
編集部が実務で意識しているのは、次の点です。BCPの内容をそのまま補助金の事業計画に書き写すのではなく、事業計画の「リスクと対応」の部分に、重要業務、目標復旧時間、代替の手段を、数行で具体的に書く。この数行が書けるかどうかで、自社が緊急時の動きを考えているかが見えます。書けない場合は、BCPの5段階の最初の2つ、基本方針と重要商品の検討から始めるのが近道です。
加点があるかどうかは、補助金ごと、回ごとに違います。この記事を読んだ時点で、加点を期待して認定を取るのではなく、公募要領を確認してから判断してください。認定の取得に時間がかかる場合もあるため、申請の締切の直前に着手すると間に合わない可能性があります。標準的な処理の期間は、中小企業庁の資料で確認するべき事項です。
よくある質問
| 質問 | 答え |
|---|---|
| BCPは補助金をもらえる制度ですか | いいえ。J-Net21のこのページは、BCPの考え方と策定手順、認定制度の紹介です。交付される金額は示されていません |
| 従業員が少なくても作る必要がありますか | ガイドラインは、資金や人に余裕がない企業も含め、すべての企業に導入が望まれるとしています。初めから完璧を目指さず、できることから始める考え方です |
| 最初にすることは何ですか | J-Net21の最初の段階である基本方針の立案です。何のために作るのか、どんな緊急事態を考えるのかを決めます |
| 重要商品はいくつ決めるべきですか | J-Net21の例は3つです。決まった数の指定はありません。優先順位が付くことが大切です |
| 認定を受けると何が得られますか | J-Net21は、税制優遇、金融支援、補助金の加点などの支援策を受けられると説明しています。内容の詳細は、中小企業庁などの一次資料で確認してください |
| 事業継続力強化計画は、いつ始まった制度ですか | J-Net21によると、令和元年7月に施行されています |
| 作成後にやることはありますか | 年1回以上の確認、研修、掲示、取引状況や人事異動に応じた更新です(J-Net21)。ガイドラインは、点検と経営者による見直しを、それぞれ年1回以上と示しています |
| 地震以外の災害にも使えますか | ガイドラインは、自然災害のほか、大事故、感染症のまん延、テロなどの事件、サプライチェーンの途絶、サイバー攻撃など、事業の中断をもたらすあらゆる事象に適用できるとしています |
| 計画は分厚いほうがよいですか | いいえ。ガイドラインは、文書の重要性は緻密さではなく、対応する人の行動を支えることにあると述べています |
| 取引先にも取組を求められますか | ガイドラインは、調達先の事業継続能力の把握や、BCMの実施の要請・支援、共同訓練を、対策の例に挙げています |
最後に確認する先と、このページの限界
この記事は、J-Net21の「中小企業BCP(事業継続計画)の普及促進」(2022年1月内容改訂)、内閣府防災担当の「事業継続ガイドライン」(令和5年3月)、東京商工会議所のニュースリリース(2024年3月14日)を読んで書いています。事業継続力強化計画の認定要件、申請書式、現在の優遇措置の内容は、中小企業庁のページが一次資料です。編集部の環境ではアクセスが制限されて閲覧できなかったため、ここでは書いていません。J-Net21のページの説明にとどめています。
内閣府の事業継続ガイドラインに関する問い合わせ先として、内閣府政策統括官(防災担当)の電話 03-3502-6984(直通)が、内閣府のページに載っています。
BCPは、作った日が完成ではなく、見直しを重ねて使える形に近づけていく取組です。補助金の準備をしている会社は、事業計画の中に、設備が止まったときの備えを一行でも書けるかを確かめてください。この記事の内容に合わせた事業計画づくりの相談は、ProdX Crowdの補助金・経営支援顧問サービス(月額10,000円、初期費用0円、成果報酬0円、最低契約期間なし、いつでも解約可)でお受けしています。
この制度を一言でいうと
「中小企業BCP(事業継続計画)の普及促進」は、中小企業基盤整備機構(J-Net21 中小企業支援施策)が実施する認定制度です。対象の地域は全国です。
近年取り入れる企業が増えているBCP(事業継続計画)について説明しています。 過去にわが国で大地震が起きた際、震災地域にある工場では建物や設備が倒壊し、電気・水の供給が止まり、生産がストップしました。交通機関は麻痺し、企業は顧客に製品やサービスを供給できない状況がしばらく続きました。結果、顧客が離れて業績が悪化し、廃業した企業もあります。 企業を存続・成長させていくためには、このような緊急事態がいつ起きても早期に復旧できる対策をあらかじめ準備しておくことが必要です。 ここでは、近年取り入れる企業が増えているBCP(事業継続計画)について説明します。
受付の期間は、通年(随時)で受け付けています。
| 制度名 | 中小企業BCP(事業継続計画)の普及促進 |
|---|---|
| 実施機関 | 中小企業基盤整備機構(J-Net21 中小企業支援施策) |
| 種類 | 認定制度 |
| 対象地域 | 全国 |
| 受付期間 | 通年(随時)で受け付けています |
「中小企業BCP(事業継続計画)の普及促進」の対象になる方
対象になるかどうかを、この制度で定められている条件ごとに整理します。
- 1地域全国
- 2規模従業員数の制約は示されていません
| 確認すること | この制度の内容 |
|---|---|
| 地域 | 全国 |
| 規模 | 従業員数の制約は示されていません |
この制度の内容
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| その他 | 近年取り入れる企業が増えているBCP(事業継続計画)について説明しています。 / 交通機関は麻痺し、企業は顧客に製品やサービスを供給できない状況がしばらく続きました。 / 結果、顧客が離れて業績が悪化し、廃業した企業もあります。 / 企業を存続・成長させていくためには、このような緊急事態がいつ起きても早期に復旧できる対策をあらかじめ準備しておくことが必要です。 / ここでは、近年取り入れる企業が増えているBCP(事業継続計画)について説明します。 |
| 地域 | 過去にわが国で大地震が起きた際、震災地域にある工場では建物や設備が倒壊し、電気・水の供給が止まり、生産がストップしました。 |
「中小企業BCP(事業継続計画)の普及促進」の手続きの流れと日程
この制度は通年で受け付けられています。予算がなくなり次第、受付を終了する場合があります。
- 計画の作成現状・目標・内容
- 支援機関の確認制度による
- 申請期限・申請先を確認
- 認定設備取得の前に
- 優遇措置の利用税制・融資・加点
- 毎年の報告実施状況
「中小企業BCP(事業継続計画)の普及促進」についてのよくある質問
Q&A中小企業BCP(事業継続計画)の普及促進
Q. 中小企業BCP(事業継続計画)の普及促進の受付期間はいつですか?
通年で受け付けています。予算の状況により終了することがあるため、早めに実施機関へ確認します。
この制度を検討するときの確認リスト
| 確認項目 | 状況 |
|---|---|
| 対象の地域(全国)に、事業所がある | □ はい □ いいえ |
| 交付決定(または承認)の前に、発注・契約をしない | □ はい □ いいえ |
| 後払いの資金繰り(つなぎ資金)の目処が立っている | □ はい □ いいえ |
情報の確認元:中小企業基盤整備機構(J-Net21 中小企業支援施策)の公開情報。最新の募集状況・申請書類は、実施機関等のページで入手できます。 情報取得日:2026/10/12。
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